コンクリートに愛を

山口 統央鹿島建設株式会社
土木設計本部構造設計部長
山口 統央

私の橋梁への関わりは大学時代、4年次に配属された研究室で睦好宏史先生に出会ったことがきっかけです。その後、橋梁の世界にどっぷりと30年間も携わることになるとは思いもしませんでした。
先生の研究テーマの一つであった外ケーブルの研究に携わり、PC構造の合理化を目指して外ケーブル構造にプレキャストやFRPを適用する研究を行いました。その載荷実験が思いのほか楽しく、実際にPC梁が壊れる時の挙動を実地に学ぶことができ、これがその後の私の技術の根幹となりました。
その後、外ケーブルPCa構造の共同研究でご縁のあった鹿島建設に入社しました。橋梁の設計部門に配属され、入社前の1月に兵庫県南部地震が発生しており、設計部では耐震性の見直しや対応などで設計部は多忙を極めていました。配属初日の夕方に「歓迎会があるから22時まで待っていて」と言われたことは今でも印象に残っています。
入社3年目には、徳島自動車道の愛媛県側の橋梁現場に赴任しました。職員5名による一般的なカンチレバー形式のPC箱桁橋の現場でしたが、県境を挟んだ徳島県側には、田中賞を受賞した弊社の池田へそっ湖大橋の現場があり、規模も大きく注目度の違いに羨ましさを感じました。しかし、人数が少ない分、様々な業務を任され、橋梁技術者として大きく成長できた現場となりました。
その後は、設計部と橋梁現場を往復する橋梁歴となりました。浜名湖にかかるはまゆう大橋では、補助桁併用張り出し架設工法を初めて適用し、様々な苦労とともに完成させたことを思い出します。また、北陸新幹線の飯山駅の鉄道高架橋では、冬季に3~4㍍の積雪に見舞われ、積雪が始まるまでに目標工程をこなす必要があり、工程短縮策を様々試しました。
設計業務では、新東名・新名神高速道路の新設PC橋梁の詳細設計に携わりました。NEXCOのみなさまとともに、様々なチャレンジを行わせていただき、どの橋にも思い出があり、印象深い橋梁です。
40代には、徳島南部自動車道 吉野川サンライズ大橋に技術営業から始まり、技術提案、詳細設計、現場への赴任、そして竣工まで足掛け10年ほど関わりました。橋長1696・5メートル(スパン長130メートル)のPC15径間連続箱桁橋で、プレキャストセグメント工法に設計変更した工事でした。
気象・海洋条件や用地の制約条件が厳しく、施工は困難を極めましたが、それを乗り越え、橋梁技術者として集大成の橋梁となりました。西日本高速道路のみな様、JⅤの三井住友建設と東洋建設の関係者のみな様には大変お世話になり、多くの力を結集して完成することができたことが誇りです。
最後に「コンクリートに愛を」というタイトルは、資格試験で面接官から「あなたからコンクリートへの愛を感じない」と言われたことがきっかけです。それ以来、橋やコンクリートに愛を持って仕事ができていたかを、常に自問しながら歩んできました。愛をもって仕事ができたか、引退した時に答え合わせをしてみたいと思います。
次は、吉野川サンライズ大橋で大変お世話になった、2代目工事長である西日本高速道路の今村壮宏様にバトンを渡したいと思います。

愛知製鋼