プレストレストコンクリートに魅せられて―私の橋梁設計人生

林 克弘株式会社オリエンタルコンサルタンツ
中部支社 構造部 主監 兼 事業推進本部 高度化推進室
林 克弘

橋とともに歩んだ35年―技術者としての軌跡~土木研究所の吉田英二さんからバトンを受け、橋梁設計に情熱を注いだ35年余りの歩みを振り返ります。
原点―モノづくりへの興味~三重県の自然豊かな田舎町で生まれ育ち、幼少期は野山を駆け回る毎日でした。小さい頃から構造物の仕組みに興味があり、分解しては元に戻すことが好きでした。当初は「高いビルを造りたい」という夢を抱き建築家を目指しましたが、芸術的センスに自信がなく、大学では土木工学を選択。そこで出会ったのが橋、特にプレストレストコンクリート構造の橋でした。この出会いが、私を〝橋屋〟へと導きました。
大学時代―技術への没頭~卒業研究では構造研究室に所属し、有限要素法のための大型要素マトリックス作成に取り組みました。シェル要素モデルを対象に、フーリエ展開した式の近似解を求めるプログラムを作成し、収れん計算を繰り返す日々。夜中に電算を回しながら、夢中でコードを書いたことを今でも鮮明に覚えています。
社会人としての第一歩~1989年、橋の設計を志して入社。しかし、最初の配属は名古屋支社の技術部で道路設計担当。橋ではなく、トンネル坑口部の地すべり対策杭の設計が初仕事でした。その後も道路設計や下水計画、高速道路跨道橋の点検、地下駐車場の設計など、希望とは異なる業務を経験しましたが、これらは今の技術力の礎となっています。
念願の橋梁設計へ~入社2年後、ついに橋梁設計に携わることができました。最初の橋は小川に架かるPC単純プレテンT桁橋。橋梁計画から実施設計まで担当し、試行錯誤を重ねて完成させた第1号です。当時は全体一般図を手書きで描き、下部工は自動設計マシンでCAD図面を出力し編集。何度もやり直しながら、橋づくりの奥深さを学びました。
代表作と学び~コンクリート橋の設計は、レオンハルトの『コンクリート講座』や『ブリュッケン』を熟読し基礎を固めました。代表作としては、徳山ダムの徳ノ山八徳橋(PCエクストラドーズド橋)・磯谷ベロリ橋・扇谷姫街道橋、鹿児島港の黎明みなと大橋(PC5径間連続ラーメン箱桁橋)、菰野第二高架橋西(PC11径間連続箱桁橋、土木学会田中賞受賞)があります。いずれも建設途中や完成後に現場に足を運び、構造物が形になる過程と完成した後の経年の変化を興味津々で視察し、設計を振り返り次に繋げるようにしています。
現場と研究で得たもの~2002年には愛知県道路公社に出向し、知多横断道路の施工管理を担当。構造物が形になっていく醍醐味を肌で感じました。さらに2014年から3年間、土木研究所に出向し、道路橋示方書の部分係数化改定に向けたコンクリートはり部材のせん断の研究に従事。基準の背景や安全率の考え方を学び、技術者としての視野が大きく広がりました。
これからの使命~こうした経験を糧に、現在は委員会活動などを通じて、橋梁設計の安全性と信頼性向上に取り組んでいます。橋づくりは、技術と情熱の積み重ねです。これからも、安全で美しい橋を追求し続けたいと思います。
次は土研出向時に共に基準改定に取り組んだNEXCO西日本の藤井雄介さんにバトンを渡します。

愛知製鋼