吾唯知足2025年10月21日号掲載分

今年の春先から全国で熊の出没と、その被害が続出している。過去最悪だった2023年度では全国で被害者数219人、死亡者数6人に上った。今年は9月末時点で既に108人の被害、5人の死亡が確認される▼10月に入っても宮城県では熊によるとみられる遺体が山中で発見され、またキノコ採りの女性の行方不明も伝えられる▼昨年は熊が好きなドングリなどが豊作だったため個体数が増加していたところに、特に東日本でのドングリが不作。これが人里に下りる熊増加につながっているという▼山林や耕作地の放棄で里山が荒廃し人間と熊の領域の緩衝地帯が無くなったことも「出会い」の一因という。群馬県沼田市では男性二人を襲った上、スーパーに入って堂々、食べ物をあさる熊の姿が報道された▼動物園の「クマさん」と違い、深山幽谷で生態系の頂点で生きてきた捕食者にとって人間は食べ物の一つに過ぎない。また身体には未知のウイルスも付着しており、爪でひっかかれただけで、ウイルス感染の危険もある▼9月から施行された改正鳥獣保護管理法では市街地での緊急銃猟を自治体判断で可能としているが、問題はこの危険な作業を行う鳥獣対策員の不足。ことはもはや「災害」であり、早急の対策が必要だ。

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