都内のビジネス街で当たり前のようにキッチンカーを見るようになった。手軽、便利、そして神出鬼没。行列のできる店を見かけることもしばしばだ。香具師(やし)の露店が主役だった夏祭りにもキッチンカーの進出は目覚ましい▼日本ケータリングカー協会のHPによれば、移動販売の歴史は江戸時代の屋台の夜泣きそばにまで遡るという。今では世界に広がる握り寿司も江戸時代は屋台で供されたファストフードだ。吾唯知足子の幼少期、冬の風物詩だった石焼き芋も移動販売の典型だろう▼戦後昭和史の重大事件の一つ、あさま山荘事件。雪に囲まれた現場はテレビ画面を通してもひりひりとする寒さが伝わってきた。この時も警視庁の給湯器付きキッチンカーが活躍、民間企業が提供したカップ麺を食べる機動隊員の姿が全国放送で流された▼能登半島地震ではNPOなど様々な団体のキッチンカーが被災地を支援している。今月1日からはキッチンカーなど災害現場で威力を発揮する「災害対応車両」の事前登録制度が始まるが、官・民の力と智恵の結集が災害からの復旧力を高めると期待も高い▼来年度に向けた「国土強靱化実施中期計画」も今月中に公表される。「世界一の防災大国」を目指す石破総理に期待したい。