
川田テクノロジーズ株式会社
技術研究所技師長 理事
街道 浩
大学3年のとき、ある相談があり故西脇威夫先生(武蔵工業大学名誉教授)の部屋を訪ね、ひとまず先生の研究室に籍を置くことになった。これが橋梁に関わる遠因になり、そうでなければ違う道を歩んでいたと思う。研究室には大学院生が多く、つい修士課程に進んだ。当時助教授だった増田陳紀先生(東京都市大学名誉教授)がテキサス大学のオーデン先生のところから戻ってこられ、有限要素法を中心に教えていただいた。
修士課程ではそのころ報告され始めた鈑桁の疲労損傷をテーマにした。設計に用いる格子解析に比べ、床版をシェル要素でモデル化すると解析結果が実挙動にぐっと近づくことに興味を持った。疲労損傷の原因として垂直補剛材と溶接のサイズが小さいこと、床版厚が薄いこと、供用後の縦桁増設と対傾構の補強が悪さをしていることが有力であった。
川田工業に入って数年間は、高架橋のRC床版の縦桁増設・鋼板接着という補強工事が続いた。道路橋示方書が改定され既設床版の不足する厚さと配力鉄筋を補うための処置だった。修士論文で悪影響があるとした縦桁増設が最初の仕事になるとは因果なものである。この業務では、補修・補強工事の一丁目一番地が測量であることを骨身に染みて分かった。測量図の縦断勾配の+と―を取り違え、工場の原寸資料が最初からやり直しになり、手配した鋼材を無駄にしないよう四苦八苦したことがあった。
しばらくして、レインボーブリッジの補剛桁JVに出向したり、新東名高速の最初の工区である東海大府高架橋を担当したりした。いずれも大所帯のJVであり、多くの方々と知り合うことができた。
1995年前後から鋼橋は合理化・省力化・長寿命化に舵を切り、鋼桁に対して床版のウェイトが大きくなっていった。この時期に土木学会の床版関係の委員会や旧建設省の床版の共同研究に参加するようになった。PC床版や合成床版が輪荷重走行試験によりとても丈夫であることが明らかになり、その後の道路橋示方書の規定へと繋がった。
並行して、社内ではスタッドタイプの合成床版の開発を担当することになった。2009年には松井繁之先生(大阪大学名誉教授)に指導していただき、この床版に関する学位論文をまとめた。しかし、もっと良い合成床版を探し求めているうちに、突起リブタイプのものにたどり着き、自らの学位論文の命脈を断ってしまうことになった。両タイプの合成床版の施工実績は現在までに200万平方㍍を超えている。
10年から社会基盤維持管理研究会(会長:東山浩士近畿大学教授)に所属し、既設橋梁の診断や維持管理に携わることになった。また、共著である「道路橋床版の長寿命化技術」「道路管理者のための中小規模橋梁の維持管理ハンドブック」を執筆した。後者をテキストにした講習会は毎年開催され多くの技術者が受講している。
16年から道路橋補修・補強i―ギルド研究会(会長:藤野陽三東京大学名誉教授)にも所属している。毎年技術講演会と現場見学会を実施しているが、最近橋梁技術者の「寺子屋」をスタートした。この企画は、発注者と受注者、ベテランと若手のように立場の違う技術者が自由に話し合い交流する場を提供するものである。維持管理には建前だけでは解決できないことが多く、本音のコミュニケーションを目指している。
このように、近年は東京と大阪の両方で維持管理に携わっており、これからも微力ではあるものの橋梁に関して貢献していきたいと考えている。
次回は、社会基盤維持管理研究会でお世話になっている東山浩士近畿大学教授にバトンを受け取っていただきます。
