中日本高速道路株式会社
技術本部 環境・技術企画部構造技術課 課長代理
山口 岳思
私は2006年に中日本高速道路に入社し、はじめて橋梁に大きく関わったのは3場所目の新名神建設を担う事務所です。その中では、プレキャストセグメント橋である鈴鹿高架橋の計画が印象的でした。隣接のサービスエリア盛土地をセグメント製作・ストックヤードとして活用した計画の実現に向けて、架設順番や運搬路、隣接工事工程などの調整に奔走し、プレキャスト橋は特に工事計画が重要であり、これが無いと合理性が発揮されないことを痛感しました。
それ以降、支社の構造技術課にて、新東名、東海北陸道4車線化などの新設設計を経験しました。やっと受注者と設計で議論できるようになったのは、課長代理のころからです。その中でも印象的な橋は、日本一の橋脚高でハーフプレキャストを用いた鷲見橋、バタフライウェブを有するエクストラドーズド橋の中津川橋(工事名称)、2.7キロ超でUコンポ橋の新御殿場高架橋などです。
振り返るとプレキャスト技術に関わることが多く、生産性向上の取り組みとして急務であって、PC工学会委員会においては接合部のあり方やVFMの考え方について委員各位と議論したことは私の財産です。
また、先日新東名で国内最大級となるバランスドアーチ橋の河内川橋(工事名称)のアーチ閉合式に参加しました。設計で関わった橋が形となり、雄大に聳えるその姿は圧巻であり、地元の方からもランドマークとして完成を楽しみにしてもらっていると聞くと誇りに思えます。
一方、土木研究所への出向もあり、新設と打って変わってコンクリートの塩害対策やモニタリング、FRP材料など土研の理念である「百年後の社会にも責任を持てる研究」に携わることができました。土研では全国の劣化・撤去橋梁の調査を行い、まさに終末期の橋梁と対峙する機会を得ました。これを教訓とした維持管理システムの構築や新設へのフィードバックは重要な作業と感じました。また、H29道路橋示方書の改定作業の時期でもあり、不確実性といった制限値の背景を知る機会となりました。
私の好きな曲にMr.Childrenの「彩り」という曲があります。この曲には「僕のした単純作業が、この世界を回り回ってまだ会ったこともない人の笑い声を作ってゆく」という歌詞があり、些細な作業でも生き甲斐となり自他に彩りを与えるとの思いがあります。
この考え方ができれば、自身がやってきた橋梁業務が高速道路となり、利用者の誰かを笑顔にしたりすることは、とてもやり甲斐となり、誇りに思えるようになります。
ただ、逆に言えば検討希薄となった仕事は不幸を与えかねないと常々考えてしまいます。これに対し、これまでの経験をフル活用して安全に関する検討を尽くす他に手段が無いと考えています。
橋梁の仕事を通じて、橋はランドマークになり得る魅力があり、まさに地域の風景に彩りを与えていると実感します。そして、少なからず事業に関わる私自身にも生き方に充実感をもたらすことは間違いなく、これに加え誰かの人生にほのかでも彩りを与えられているのであれば幸いです。
次は土木研究所に出向した際に、同世代の同僚として様々な研究に一緒に取り組んだ吉田英二主任研究員に繋ぎます。
