橋梁床版に心惹かれて

東山 浩士近畿大学
理工学部社会環境工学科教授
東山 浩士

わが家の子供たちが任天堂「どうぶつの森」というゲームを熱心にしているのを見て、私も子供の頃にまちづくり系のテレビゲーム(ゲーム名はもう忘れてしまった)をやっていたのを思い出しました。その頃から建設分野に興味があったのかもしれませんが、大学は土木工学を志望し、近畿大学に入学しました。当時、明石海峡大橋の主塔が完成した頃で、構造工学や橋梁工学に関心があり、卒業研究は、合成桁を外ケーブルで補強する実験・解析を行うという話を聞いて、栁下文夫講師(当時)の研究室に決めました。卒研の合間に研究室にあった、中井博教授編「プレキャスト床版合成桁橋の設計・施工」(森北出版)を読んでいた際に、『PC床版の押抜きせん断破壊面の角度が変化するが、厳密に評価するのは困難である』との記述があり、評価式が無かったようです。大学院進学を考えていましたので、大学院ではこれを研究テーマにしたいと思い、大阪大学大学院 松井繁之教授(当時)の研究室に入れて頂くことになりました。結果的には、合成桁の外ケーブル補強が研究テーマでしたが、外ケーブルで鋼桁に導入したプレストレスをRC床版にも伝達させてRC床版の疲労耐久性も向上させるという研究を進めました。5年間の大学院在学中には松井教授から多くのことを教わり、日ごろから「五感を働かせて現物をしっかり視る・診る・看るように」とご指導を受け、研究者としての道を拓いてくださったことに感謝しております。
その後、近畿大学助手として教育・研究に従事することになり、橋梁床版を主たる研究テーマに活動してきました。それまでのPC床版に関する研究の次に、軽量コンクリートや繊維補強コンクリートを用いた床版の研究に取り組むことにしました。これらの研究では、材料調達や配合などの材料面において、神戸市立工業高等専門学校の水越睦視教授に大変お世話になりました。また、これらの研究を踏まえ、カナダのブリティッシュコロンビア大学のNemkumar Banthia教授の研究室にて1年間の在外研究を経験することができました。研究室には世界中から留学生が集まっており、とても刺激を受けました。帰国後は、橋梁床版の維持管理、鋼・コンクリート合成床版の開発やずれ止めの疲労強度など、研究の幅を拡げ、最近では、FWD(Falling Weight Deflectometer)を用いた床版の健全度評価方法を構築しました。
これまでを振り返り、それなりの成果にまとめることができた(勝手に思っていることをご容赦ください)と言える取り組みは、少なくとも5年以上の歳月を要してきました。スウェーデンの心理学者K・Anders Ericsson教授の「1万時間の法則」(これに対する見解は諸々ある)を知った時、納得した感が強かったですが、これからも熱意をもって橋梁床版について探求していきます。また、もっぱら実験が好きですので、これからも学生と一緒に、時には模索し、時にはアイデアをもらいながら、橋梁技術に興味・関心のある後輩を育てていきます。
次回は、大学院時代から付き合いのある、ピーエス・コンストラクションの桐川潔氏にバトンを渡します。

愛知製鋼