三井住友建設株式会社
土木本部橋梁構造設計部
長紙永 祐紀
私が橋梁技術者としての道を歩み始めたのは、大学でコンクリート工学を学んでいた頃、熊本県上益城郡にある鮎の瀬大橋を目にしたことがきっかけでした。ゼネコンを志望しており、どの会社にするか調べているとき、旧住友建設の採用案内にあった写真を見つけ、実物の橋を見に行き、その美しいプレストレストコンクリート橋に感銘を受け、橋梁建設に携わりたいという思いから旧住友建設を志望し入社することになりました。
入社後は設計部に配属になり、新東名高速道路のいくつかの橋梁の詳細設計に従事しました。設計部での3年間を経て現場での勤務に従事することになりました。初めての現場は伊勢湾岸道の古川高架橋で、1年間ほど施工に従事しました。
その後、三重県多気郡大台町において、鋼メラン材を用いたアーチ支間65メートルの中規模アーチ橋である菅合大橋の現場に従事しました。この現場では、アーチ橋ならではの多くの工種を経験でき、その後の業務における大きな糧になったと思います。
再び設計部に戻ってからは、新東名高速道路の的場高架橋の設計を担当し、現場で施工にも従事しました。プレキャストセグメント橋の張出し架設という難易度の高い工事でしたが、発注者である中日本高速道路様をはじめとし、現場職員、協力会社と力をあわせて、無事に完成することができました。初めて設計、施工の両方を経験した橋梁であり、設計が実際の構造物として形になる過程を肌で感じ、施工に配慮した設計や品質管理の重要性を実感した橋梁です。
その後、初めて設計管理技術者をさせて頂いたのが、バタフライウェブ橋である新名神高速道路の芥川橋です。はじめての設計管理技術者の立場に困惑している私に、当時の上司から「自分らしい設計をすればよい」と言われました。10年以上前のことですが、その言葉は今でも鮮明に覚えています。それ以降、様々な規模、構造形式の橋梁の設計に携わってきましたが、設計において「自分らしさ」をどう表現するのかを自問しながら業務に携わってきました。これまで、バタフライウェブ橋、張出し架設とスパン・バイ・スパン架設のプレキャストセグメント橋、U形桁一括架設のコンポ橋などの新しい構造、施工方法に携わってきました。
しかし何も新しい構造、施工方法の橋梁を設計することだけが「自分らしさ」ということではないと考えています。一般的な構造、施工方法においても、施工において品質を確保できるような材料の選定、PC鋼材、鉄筋配置の工夫、補強筋の配置、維持管理性に配慮した構造、付属物の詳細など、そのような細部にこだわることでも「自分らしさ」を橋梁の設計に反映することができると思っています。設計、施工の両方に深く携わることができる施工会社で設計をする技術者ならではの達成感ではないかと思います。また、現在、所属している設計部には若い橋梁技術者が多くいます。これまで多くの方々から伝承されてきた様々な技術をできる限り伝承していきたいと考えています。
次は、プレストレスコンクリート工学会の委員会などで度々、お世話になっている日本構造橋梁研究所の岡田俊彦さんへバトンを渡します。
