16歳の転機

森田 浩規今井重機建設株式会社
常務取締役
森田 浩規

この執筆依頼を横河ブリッジ金森氏より紹介頂き、過去執筆者の皆さんのように大きな話題が無いので、自身の橋梁業界に踏み入るきっかけを振りかえってみました。
私は学校生活に馴染めず高校はすぐに中退し遊びほうけていた時、友達からの誘いのまま右も左もわからない鳶工として働き始めました。建築から開始し、土木(橋梁)に出向いたのが石川県加賀市山中温泉に架かる風光明媚な「あやとり橋」でした。鋼製三弦トラス構造の逆三角形の歩道橋です。一つひとつの部材が全て違いましたので、今まで関わった建築とは全然勝手が違います。しかしこのことで仕事に対して初めて関心を持ちました。
曲線桁でどこに向いていくのか?施工中の高さも見当違いに見えましたが、職員さんの測量と親方の判断で面白い様に橋は出来上がって行きました。工法的には単純なクレーンベント工法ではありますが、初めての橋架けに驚き、技術を取得したいと思いました。親方の技術を盗みたくてその後ダム湖畔上や河川上に都市高速への橋梁架設を県内外どこでも行きました。そしてどんどん橋梁架設工事に興味を強く抱くようになりました。
大抵は景観と景色に映える優美な形状に興味を抱かれる方が多いと思います。しかし現場経験を踏まえるごとに架設工法に興味を持つようになり、後に送り出し工法の架設を行ったことで、より多くの架設工法を経験したくなり、現在の今井重機建設に入社することとしました。
入社後は諸先輩方に無知な私は資格取得や架設計画作成の指導を仰ぎました。また鋼構造物の他にコンクリート橋張出し施工やセグメント桁緊張に門構+架設桁架設にも携わることが出来ました。何年かして一通り熟練経験を得た気でいましたが、富山市の公園にて人道吊り橋を索道にて架設することになり、この索道工事がまた新たな驚きで一層興味が強くなりました。それからは当時の社長にお願いしケーブルエレクション工法の現場に赴任させてもらいました。
平成5年には地元砺波市(旧庄川町)藤橋では初めて代理人として斜吊り工法にてアーチ橋を架設し、三重県大台町でトラス橋を直吊り工法で架設しました。その後も奈良県辻堂では橋台をアンカーとしたタイバック工法、栃木県下塩原橋ではメラン材架設をPCケーブル斜吊りの経験もさせてもらいました。このころからたくさんの部下も付き指導する難しさも感じるようになりましたが、完成時の達成感と落成後に仲間たちと飲むお酒は格別でした。
また最近では老朽化による既設桁撤去も多く携わるようになり、今まで架設工事で得た経験技術を応用し計画に生かしております。
今は統括職として営業・計画業務を主にし、若手社員の育成に力を入れております。私のように当初興味がなくても、求人活動時には何か面白さや興味が湧くように伝えようと活動しております。コミュニケーションとチームワークを大事にして沢山の仲間を作り、これからもより多くの橋を架設出来るよう技術を伝承・育成できるように次世代に託したいです。
次号には現場のイロハを伝承していただいた川田建設の林勉執行役員にバトンをお渡しします。

愛知製鋼