わが国現行の民法では、結婚する際に夫婦いずれかの姓を選択しなければならないが、多くの場合、女性が改姓している▼長年慣れ親しんだ名前を変えることは、職場や地域社会において個人のアイデンティティや信頼に影響を及ぼす重大な問題だ。とくに、名前がキャリアや実績と強く結びつく場合、改姓によってこれまで築いてきた信頼や成果との連続性が損なわれる可能性がある。加えて、学術論文や契約書などにおいて旧姓を証明する手続きも煩雑になる▼言うまでもなく女性の活躍は、国や自治体、高速道路会社など発注者側、設計会社、建設会社、橋梁メーカーなど受注者側、そして学術機関においても、年々広がっており、働き方やライフステージに応じた制度整備も進み、男女が対等に能力を発揮できる環境が整いつつある▼様々な課題を踏まえ、世界の多くの国々で認められ、結婚後もそれぞれの姓を維持できる「選択的夫婦別姓制度」は、個人のアイデンティティ、職業的実績、キャリアの一貫性を守る上で極めて重要な選択肢だ▼導入に向けては、野党が今国会で関連する民法改正案を提出する動き。女性の働きやすさと共に個人の尊厳と多様性を認め合う社会への大きな一歩となるよう期待が高まっている。