世の中に役立つAIを

松田 尚子

bestat株式会社
代表取締役
松田尚子さん

「将来は大工さんになりたい」と小学生の時の日記に書いた。近所の新築の家が完成した姿を見て感動した記憶がかすかに残っている。「確かに今でも、旅先などで独特な建築物を見るのが好き」で構造の美しさに惹かれる。「3Dの仕事を始めた時、小学生の頃の夢とリンクした」と振り返る。
高校卒業後、関西から上京し東京大学の赤門をくぐった。
経済産業省の留学制度で渡米した当時、アメリカではデータサイエンスが非常に流行っていた。その面白さに惹かれ「政策に活かしたい」という思いが強くなり、帰国後も東大工学部の松尾研究室で研究を続け、博士号を取得。
しかし、経産省ではデータサイエンスの活路が見出せず、また、研究者として開発した数的処理プログラムは企業から一定の評価を得られるだけで形にならない。「やはり実際に活用していただき、世の中の役に立つものにしなければ」との強い思いから経産省を退職、AIスタートアップ企業「bestat」を立ち上げた。
起業した2018年は、既存のAI関連企業もある程度成熟し、ホワイトカラーが使うAIの市場化も進んでいた。次なる市場として「現場」で使えるAIに着眼し、3D画像処理の特許を取得。画像をアップロードするだけで3Dデータを生成・活用できるサービス『3D.Core』シリーズの提供に主軸を置き、会社は軌道に乗った。今後はアルゴリズム開発を強みとして橋梁保守・改修の領域でも『3D.Core』拡大を図っていく考えだ。
旅行で祖父の田舎、長崎を訪れた際、「平戸大橋が美し過ぎて」感動した。とにかく体を動かすことが好き。スキー、波乗り、乗馬、テニスなど幅広い。知り合いを自宅に招き、「誰かに食べてもらうために作る料理」は十八番だ。
奈良市出身。
(本間俊行)

愛知製鋼