吾唯知足2022年8月21日号掲載分

吾唯知足

全国のローカル線が赤字のため廃線の危機、瀬戸際に立たされている▼国土交通省の有識者会議が7月25日にまとめた提言では、1キロあたりの1日平均乗客数(‖輸送密度)が1千万人未満などの条件で見直しの対象になるとの明確な規定が設けられた。JRのローカル線、中でも、北海道の赤字路線は深刻な問題だ▼1964年の東京五輪の頃、記者は、岩手県の県北から、青森県の高校に、朝6時15分のローカル線で汽車通学していた。停車する各駅からは多くの男女学生や勤め人が乗ってきた。地震、台風、豪雨などで、鉄路が流出して復旧、回復まで時間がかかると、鉄路沿線の市町村の寂れ方は、尋常でなくなることを多く見てきて知っている▼勿論、バスのほうが便利になる例もあるから、決してバス路線を全面否定するものでない。各地で自動車専用道路やバイパス道路の建設が進み、交通混雑も緩和されてきた面もある。しかしただ単に、赤字だからと言って、即廃線はなかろうと▼今年は、日本に鉄道が開通して150年という。コロナ禍の影響で人流が鈍り、さらに経営悪化の鉄道会社の状況はあるだろうが、関係斯界の叡智を集め、鉄路が消えて、寂れる地方都市が少しでも少なくなる努力を怠ってはなるまい。

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