橋梁業界の未来に貢献

保田 敬一オフィスケイワン株式会社
代表取締役
保田 敬一

1994年、朝4時起きで中央卸売市場、夕方からガソリンスタンドでアルバイトをする日々、21歳。手に職を付けて自分の力を試したいと思い新聞の求人欄を見て応募したのがマック設計という当時、明石海峡大橋の管理路の設計をしていた会社でした。よく素人を正社員採用してくれたと感謝しています。 ロータス123やAutoCAD GX5を操作しながら橋梁構造とCAD製図を勉強する日々でした。鋼床版桁の材料長の計算式を間違えていたことが納品直前で発覚したことがありました。「お前は悪くない、気にするな」と一緒に徹夜をしてくれた先輩の優しさは今も私の心に残っています。社長がプログラム好きでAutoLispやC言語で自動作図プログラムを自社開発していました。私も図面が描けるようになった頃にプログラムを教えてもらい、自分で書いたコードが動いて図面が描画されていく様に感動を覚えました。 2001年に日本構研情報(現JIPテクノサイエンス)に転職し、製作情報システム部門に配属されました。キャンバー変形、収縮量、たすき展開など鋼橋の製作・施工について学びました。MIPSONの入力支援システムや落橋防止原寸ツールなどを作成、業務範囲外で作ったツールがユーザーにも好評となり社長褒賞を頂きました。 基本情報技術者試験に合格した際に、末席の私の所にきて「おめでとう、よくやった」と握手していただいた藤田耕治社長には働きながら資格試験に挑戦することの意義を教わりました。  その後、鋼橋設計や営業、企画開発などを経験させて頂いたあと、2014年に今の会社を設立しました。 当初はCADで付属物の図面作成、スタッド配置図自動作成プログラム作成など鋼橋メーカー向けの業務をこなしていました。2次元図面から3次元モデルを作成するClick3Dを宮地エンジニアリングと共同開発し、干渉チェックやCIM業務の営業を増やしていた頃、2016年に仮称・筑後川橋のBIM/CIM試行業務をJVより受注しました。橋長450メートル、鋼重6000トンを超える鋼4径間連続単弦中路式アーチ橋です。まだスッタフが3名くらいの時でした。1本のアーチリブが鋼床版箱桁を経て2本のスプリンギングに分岐し支点上にはスキューがある複雑な構造で、試行錯誤しながらCIMモデルを完成させました。3Dモデルによるフロントローディングの有用性を実感し、会社の方向性が定まりました。 2018年、国土交通省が実施する革新的技術導入・活用プロジェクト(PRISM)が公募され、IHIインフラ建設の開発部長から「多伎PC上部工で一緒にやりませんか?」とお声かけ頂きました。BIM/CIMモデルを活用した技術提案で応募し無事採択され、MRデバイスでの配筋作業や工程管理、TSによる出来形管理など、CIMデータを 施工現場で活用できる手応えを感じました。 翌年以降、九頭竜川橋、久村第一高架橋、大中小路地区オンランプ橋と4件連続でPRISMプロジェクトに参画し、コンソーシアムメンバと将来システムの議論・開発・検証を重ねています。公募から短期間での技術提案、現場試行、成果納品と苦しいことも多いですが、多伎PC上部工の取組みは日建連表彰2020の第1回土木賞特別賞を受賞することができました。 今後はこれまでの経験を生かして鋼橋とPC橋の設計と施工をつなぐ新しいワークフローを確立するとともに、若手に機会を与えて将来の橋梁業界を支える人材の育成にも注力していきたいと思っています。 次はPRISMでお世話になっているIHIインフラ建設の若林良幸様にバトンをお繋ぎします。

愛知製鋼