現場こそ原点

仲辻 浩一

酒井工業株式会社
代表取締役社長
仲辻 浩一さん

20代に酒井工業の下請け業者である瀧原工業を設立。以来ずっと橋梁と向きあってきた。 2003年に酒井工業が民事再生手続きに入ると、苦境だった同社のスポンサーとなり、のちに経営を引き継ぐ。豊富な現場経験をもとに将来の橋梁保全の需要を見越し、ゼネコンから橋梁メンテナンスの専門工事会社へと転換を図った。 さらに、現場気質の「きっちりした仕事」と「実践による人材育成」を積み重ねることで技術力を高め、会社を土台からたて直した。現在の社員数は42人。今年3月の決算では純利益約6億円を上げ、見事な経営手腕を発揮している。 モットーは「真っ当なことをきっちりする」こと。そして「現場を見て考えることが一番大事」と現場主義を貫き、今も社員とともに現場に立つ。 酒井工業は現在、大阪府港湾局が進める和泉大津大橋(和泉大津市、橋長175メートル、単弦アーチ橋)の耐震補強工事で、P1・P2橋脚の工事を担当している。支承の取替えでは、狭隘な施工スペースという制約の中で、10~20トンクラスの巨大な支承を正確に橋脚上へ取り込むための独自の工夫として、ガイドとなる特殊なレールを作成した。この工夫により大がかりな装置を使わずに巨大支承の取り替えを成功させ、P2工事では、今年度の府港湾局優良表彰を工事・技術者の2部門で受賞している。 日々、橋梁と向き合い、研鑽する社員達を「まじめな技術者集団」と評し胸をはる。一方で、建設業界が進める効率重視の働き方改革には、「要領のいい子しか生き残れない」と警鐘を鳴らす。 「地道な努力で才能を伸ばす子もいる」と人材育成の面から疑問を投げかけ、業界全体が現場に立ち返ることが技術力の継承に不可欠ではないかと将来を案じた。 兵庫県出身。1968年生まれの52歳。 (山田由乃)

愛知製鋼