部下の一言が何より

伊藤 真人

戸田工業株式会社
取締役札幌工場長
伊藤真人さん

PC橋の鋼製型枠メーカー戸田工業(大阪府茨木市、城坂和伸社長)の札幌工場で、2年前から工場長を務める。本社で受注、設計した型枠の図面から鉄板を機械で切断・溶接など加工するのが同工場の役割。工程管理や安全衛生面の責任者として神経を注ぐ日々だ。「安全もノルマも言い続けることですね」。
恵庭市内の高校の普通科在学時、地元での就職を希望し入社。当初、専門用語が何ひとつ分からず、知らない単語は全部書き出して調べた。自信につながり、27年目の今も継続中だ。
3年目の時、先代の会長に「新しい機械を入れるから」と本社の設計部へ勉強に。2週間の予定が9カ月間に及んだ。
期待のレーザー切断機は20年間待たされ、3年前に導入。100%外注していた工程が内製化でき、24時間稼働でリードタイムを一気に短縮。若い社員は最新機に興味深々。「入社の動機にもなる」という副産物も。
社では常に顧客が使いやすい型枠を目指す。危険な角を削り、ボルトを仕舞える小箱を取り付けるなど工夫を凝らす。
仕事が集中した時はとくに腕の見せ所だ。図面が届いてから出荷までを縮めるため、段取り、社内のチーム編成や外注策など思案する。「納期に間に合わせた時、最もやりがいを感じます」。
今後は「DX化を工場内に取り入れ、働き方改革、生産性の向上を図りたい」と話す。「小さなことでも積み重ねて全体を変えていければ」。一方では「指先の感覚も大事」という。「機械ではできない技術もある。溶接工などの職人も育てたい」とも。
印象に残る業務は圏央道の桶川第二高架橋(3089メートル)。初体験のバタフライウェブの型枠には試作を作り試行錯誤を重ねた。「いつかは現地に赴きたい」。型枠を製作した橋の完成画像を共有し、社員の想像力を掻き立てやる気に繋げる取組も。
休日は犬の散歩や歴史小説で気分転換。「部下から『お疲れ様でした』の一言が何よりのご褒美」と話す45歳。(片山宏美)

愛知製鋼