感謝の気持ちとともに

20170921橋歴書P立命館大学 理工学部 都市システム工学科 教授 野坂 克義

私の橋梁とのつながりは大学の研究室を選んだ時からになりますが、その前に、何故現在の職場であり、私の母校である立命館大学土木工学科(現:都市システム工学科)を選んだのか、という点に遡ると、間違いなく父親の影響でした。父親はダムの技術者として全国を飛び回っており、なんとなく自分も土木技術者になろう、という意識だったのだと思います。
立命館大学に入学して、4回生の卒業研究室に選んだのが、恩師である伊藤満教授の橋梁工学研究室でした。目に見える、後世に残る構造物として魅力を感じたのが理由でした。卒業研究では、米国の非弾性設計法について学び、修士課程での研究では鋼桁の載荷試験を実施させていただきました。実際に鋼桁断面の設計、図面の作成(もちろん簡単なものですが)、供試体の製作依頼、実験準備、そして実験の実施・実験データの整理の一連の流れを行うことにより、研究活動にやりがいや魅力を感じました。実際に鋼桁を載荷して、文字通り「壊す」ことにより、鋼材の特徴を知ることができる良い機会になりました。
修士課程が修了した後、伊藤満教授の紹介でアメリカのミネソタ大学に留学しました。博士論文のテーマは、CFRP板を用いた鋼橋の補修・補強に関する研究でした。橋梁に関するテーマではありましたが、接着剤についての知識がゼロであったため、かなり苦労したことを覚えています。ここでの研究活動は、自分の意見を持ち、研究計画、実験の準備・実施などについても自ら提案していかなければならず、語学だけでなく、研究者としての基礎を磨く良い経験になったと考えています。
2002年4月に助手として立命館大学に戻ってからは、伊藤満教授のもと、博士論文の研究テーマであるCFRP板による鋼部材の補修・補強と平行して、橋梁(おもに鋼桁)設計、鋼桁の耐荷力についての研究も再開しました。この頃、すでに日本でもCFRP板接着による鋼部材の補修・補強に関する研究は行われており、私も関連する委員会などに参加させていただきましたが、CFRP板接着補強が適用されているケースはまだまだ少ないのではないかと感じています。鋼桁の耐荷力は、研究テーマとしては非常に歴史のあるものですので、多くの研究成果が残されており、私自身もまだまだ勉強が必要だと感じています。日本においては、鋼部材の塑性域も活用する塑性設計の考え方は鋼桁設計に取り入れられておりませんが、より合理的な設計法を目指し、今後の可能性も視野に入れ研究活動を行っています。
ここ数年、津波による橋梁の被害を防ぐための検討が行われてきましたが、最近では洪水の被害に対する検討も必要となってきたのではないでしょうか。現在は、微力ながらこの問題に対しても貢献できればと考えています。自然が相手のため、橋梁の構造だけでなくさまざまな知識がより一層必要であると感じています。
学生生活も含め、これまでの研究は、私ひとりの力だけでなく多くの方々からのご協力があり達成できたと感じています、この場をお借りして感謝申し上げます。今後も、研究者としては鋼橋の設計、維持管理に貢献できるように、大学教員としては、講義・現場見学などを通じて学生に橋梁の魅力を伝えていけるように、自分なりに努力していきたいと考えています。
次回は、研究会などでお世話になっている日立造船株式会社社会インフラ事業本部の美島雄士様にお願いいたします。

愛知製鋼