「疲労」導いた恩師に感謝

坂野 昌弘

NPO法人橋守支援センター理事長
坂野 昌弘さん

東工大大学院修了後、群馬大を経て、長く関西大の教授として鋼構造の分野で教鞭を執る。一方、国交省や自治体、鉄道・高速道路会社などと連携し、橋の維持管理分野で広く活動してきた。昨年度末で大学を定年退職し、橋守支援センターに活動のフィールドを移した。 「40数年間、疲労オタク。本四等が真っ盛りの時期に恩師の西村俊夫先生は「疲労をやりなさい」としか言わなかった。先を見据えた指導だった」。 山形県出身でスキーはインカレで上位入賞経験も持つ。運動能力の高さから、自ら既設橋の現場に出向き、炎天下でホコリが充満する箱桁でも自らの目視と触診で損傷状況を判断する。管理者には頼もしい相談相手。大学に導入された大型疲労試験機で実験を重ねて学会に報告し、この分野の先駆者となった。 一方、技術を持つ関西圏の中小企業と研究会を立ち上げ、維持管理に必要な商品の開発を行うなど、産学協力体制を構築。橋守支援センター千葉と静岡、道守養成ユニットと連携してNPO化させ、人材育成や資格制度拡充を果たす。リペア会では副会長。技術分野と補修補強技士試験委員長を担当する。 また、近畿地整の新都市社会技術融合創造研究会の鋼橋の長寿命化に関するPJでは、淀川大橋や姫路大橋などの維持管理方針に対する提言や、新しい補強工法の開発を続け、土木学会関西支部に鋼橋長寿命化の研究会を設置。国際学会にも積極敵に研究成果を発表してきた。 最近は、国民会議近畿本部の情報WG長として、中小自治体管理のインフラの長寿命化に向け、技術のマッチングや、新技術の実証実験にも取り組む。 「関西特有の進取の気風と温かい周囲の方々に支えられ、新しいことに挑戦し、望外の成果もあげることができた」とし、今後の活動については、「やはり大事なものは人財。若い人が遣り甲斐をもって維持管理業務に携わることができるように微力を尽くしていきたい」と話す。

愛知製鋼