これが私の生きる道

有村 健太郎株式会社オリエンタルコンサルタンツ
関東支社高度化推進部担当主監
有村 健太郎

私は、これまでの二十数年の社会人人生の中で、施工会社やコンサルタント、研究機関や大学など、産官学の様々な場所で鋼構造を学ばせて頂き今に至ります。このお話を頂いた頃、ちょうど大学院後期博士課程の大詰めの頃で、ようやく自分の生きる道に確信が持てた折に、このバトンを頂きました。貴重な機会ですので、まだまだ若輩者ですが、鋼構造にまつわる私のこれまでを振り返らせて頂きます。 私が鋼構造に興味をもったのは、日本大学理工学部在学中に、故若下藤紀先生の橋梁工学を受講し、先生が説かれる鋼構造の魅力に惹かれ、橋梁研究室に入ったのがきっかけです。 卒業後、鋼構造を専業とする巴コーポレーションに入社しました。橋梁設計部に配属され、設計照査を3年ほど経験した後、鋼桁橋の詳細設計を担当するようになり、その中でも鋼コンクリート複合ラーメン橋の詳細設計では、上司の指導のもと、標準構造ではないRC橋脚と鋼桁の剛結部の設計を経験し、形を決める設計の醍醐味を実感しました。6年目には工場勤務となり、生産管理を通じて工場製作のいろはを学びました。 そのような中、設計の醍醐味をもっと知りたくなり、富貴沢建設コンサルタンツに転職しました。1年半余りと短い期間でしたが、鋼橋の予備設計や詳細設計のほか、橋梁点検も経験させて頂き、鋼橋の腐食が思いのほか多く発生していることを実感しました。 その後、縁あってオリエンタルコンサルタンツに転職しました。鋼桁橋の詳細設計を1年半ほど経験した頃、腐食が原因で斜材が破断した鋼トラス橋の状態を検討する業務を担当しました。橋全体をモデル化したFEM解析により、破断前後の橋の状態を検討するもので、橋が持つ冗長性を知りました。 その業務が終わるころ、土木研究所に交流研究員として出向する機会を得ました。偶然にも腐食の著しい既存の鋼トラス橋を対象にした臨床研究に携わらせて頂き、当時の上席研究員である東京都立大学村越潤教授のご指導のもと、解析的、実験的な検討により、橋全体系と部材系のそれぞれの耐荷性能評価手法を検討し、今まで知り得なかった研究の奥深さを知りました。また、平成24年道路橋示方書の改定にも関わらせて頂き、鋼箱形断面圧縮部材の座屈規定の改定では、座屈現象と設計規定の関係を深く学び、まだまだ知識が足りてないことを痛感しました。 2年数か月の出向を終え帰任すると、大阪市立大学山口隆司教授との鋼構造に関する共同研究が立ち上がっており、志願して担当することになりました。数年が経過したのち、鋼構造に関してさらに追及したく、大阪市立大学大学院後期博士課程に社会人として入学しました。研究テーマは「腐食劣化の生じた鋼I桁橋の橋梁システム冗長性を考慮した合理手な耐荷性能評価手法に関する研究」で、鋼桁橋、腐食、冗長性というこれまで経験してきたものから成っています。3年半もの間、山口隆司先生に懇切丁寧にご指導頂き、ようやく研究がまとまりましたので、この3月に卒業します。 現在、私は高度化推進部という部署に所属し、鋼構造チームのリーダーを任されています。これまで、産官学の様々な場所で鋼構造を学ばせて頂き、ようやく自分の生きる道に確信を持てるようになりましたので、もう迷わず邁進したいと思います。 次回は、出向時に大変お世話になった土木研究所の澤田守さんにバトンを渡します。

愛知製鋼