再び、歴史に残る仕事を

細野順平

株式会社錢高組 大阪支社
資材部 資材課 副課長
細野順平さん

立命館大学理工学部で土木を学び、恩師から就職を勧められた錢高組。勝鬨橋、大阪市庁舎など有名建築を手掛けてきた同社の歴史の1ページに、自分の携わった建築物を加えてみたい。そんな思いが芽生えた。 1997年に入社後、シールド工事や造成工事の現場を中心に実績を重ねた。7年目、橋梁技術者として初めて高松自動車道の田村高架橋に携わった。この現場を乗り越えた経験が自信となり、以来、キャリアの半分以上は橋梁を手掛ける。 印象的なのが三陸沿岸道路、岩手県北部の安家(あっか)川に架かる「下安家大橋」だ。冬季は最低気温がマイナス15度になることもあり、厳しい環境下で品質確保に苦心した。一方、橋の近くでサケなどの孵化場を管理する漁協組合長との交流が心に残る。ある時、突然呼び出され「食っていけ」とアユの塩焼きをごちそうしてくれた。会話を重ね、真摯に対応したことで築けた関係だと感じる。 もうひとつは、奈良県の国道168号辻堂バイパスの「夢翔(ゆめかけ)大橋」だ。特に、3径間連続エクストラドーズドラーメン箱桁橋区間は、標高が420メートルと高く、大きく曲線を描く道路、建築限界を確保するためのY字形状の主塔などに高い技術が求められた。多くの困難を乗り越えて完成させたからこそ、「再び、こういう魅力的な橋を手がけたい」と思う。 しかし、現在は資材部に在籍している。昨年、ヘルニアで入院を余儀なくされ、復帰後に部署を異動したのだ。「新しい業務に携わるのも楽しい」と前向きに取り組み、今は体調に不安はなく、機会があれば現場復帰できる自信がある。 嬉しい誤算は、現場を離れたため家族4人の団らんが増えたこと。リクエストでたこ焼きを振る舞う際には、業務用のたこ焼器を使うのがこだわりだ。 こうしてエネルギーを蓄え、いつか再び現場へ。歴史に残る仕事を積み重ねていきたい。 京都生まれの、大阪育ち。50歳。(佐々木智仁)

愛知製鋼