右肩上がりの橋人生

松本 正之株式会社日本ピーエス
中国支店 技術グループ 主幹
松本 正之

私は2001年に日本ピーエスに入社し、プレストレストコンクリート橋の仕事に携わり、今年で23年目を迎えました。 このリレー橋友録のバトンをPC建設業協会中国支部で長年大変お世話になった谷前技術部会長から光栄にも頂きましたので、若輩者ではありますが執筆させていただきたいと思います。 私が土木分野に進むきっかけは、お恥ずかしながら特別な思いはなく、漠然とものを作る仕事をしたい、ということで土木学科の大学に入学したことから静かに始まりました。 4年生で配属になったコンクリート材料研究室でコンクリートに興味を持ち、先輩方がPCの橋梁メーカーへ就職されていたのに感化され、縁あって今の会社に就職することになりました。 新入社員時代には張出架設の2径間連続ラーメン箱桁橋の現場に配属されました。 その橋梁は、左右径間長が大幅に異なり、長支間側では短支間側に比べて10ブロックも片張出しが必要な不等径間の現場でした。 長支間側の橋台付近では移動作業車が地山と干渉するため下段作業台を途中のブロックで分離し本体のみを前進する方法をとりました。 不等径間に加え、移動作業車の重量変化など、高さ管理は複雑で困難なものでした。張出施工時の最大上げ越し量も200ミリにも及んでおり、少しの振動や気温の変化で揺れる敏感な橋を計画通りの橋面高とするため、午前と午後で桁面高と部材温度を測定して設計値と実測値を比較分析し、型枠設置時の計画高さを微調整しました。 技術主任から施工後に「プレッシャーは計り知れなかった」との本音をお聞きし、責任の大きさと出来上がったときのやりがいを教えられました。 橋梁人生のターニングポイントは、新東名高速道路の詳細設計を行った際にやってきました。 初の高速道路の詳細設計物件で発注者と打合せを行った際に、私の理解不足から叱責を受け、自分の技術者としての未熟さを痛感させられたと同時に橋梁設計の深みを学ぶことができ、より橋梁への興味が目覚めました。 現在は設計業務の他に現場支援業務としてBIM/CIM業務を担当しています。 2015年度の国の試行物件から取組み始め、社内での内製化をめざして講習セミナーでスキルを習得しました。 モデルの作成・運用作業は、土木分野外の要素が強いため四苦八苦しますが、一連の施工を現実に近い状態でパソコン内に再現することで2次元図面では見落としそうな施工上の問題点の洗い出しや現場経験の浅い技術者の知識・経験の補填に効果的だと感じています。 PC橋は、コンクリート・鉄筋・PC鋼材などの材料が複雑な形状で構築されているため、全てを機械による自動化施工とすることは難しいですが、BIM/CIMモデルとのデータ連動により材料加工の自動化やMR技術を使った省力化など部分的な自動化が可能と考えます。 モデル作成労力の削減はソフト開発に期待し、現場での有効利用を関連業者にも協力をお願いしつつ模索したいと考えています。 まだまだ課題の多いPC橋のBIM/CIMですが、伸び代の多いこの業務を通して橋梁に益々はまっている今日この頃です。 次回は、PC建協中国支部でPCの普及活動などでご一緒しているコーアツ工業の吉滿龍彦様にリレーさせていただきます。

愛知製鋼