吾唯知足2019年9月11日号掲載分

吾唯知足記者が小学生の頃、6人家族で食卓を囲んでいた時、些細な言い合いから喧嘩を始めた子供たちに、業を煮やした父が、やおら、ちゃぶ台をひっくり返したことがある▼謹厳実直を絵に描いたような父の突然の行為に、騒いでいた子供たちは震え上ったものだ。ただ一人、モノ言わぬ母が、冷静に辺りに散った夕食の残骸を片付けていた▼たった1回の、既に鬼籍に入った父の「ちゃぶ台返し」をある日の夕食の光景として思い出すほどに、心に焼き付く苦い記憶だ▼星一徹氏の「ちゃぶ台返し」がつとに有名だが、アニメの中でかの人が実際にひっくり返したちゃぶ台はせいぜい2回、原作漫画では実は皆無だそうだ▼いわば「ちゃぶ台返し」状態にある、現在の日韓関係、閑古鳥が鳴く観光地の映像を目にすれば「政冷経熱」と言われたことが懐かしくなる▼地方創生が売り文句の現政権にして、地方都市の悲鳴を聞くことも重要ではないか。つけ加えれば隣国とて、経済の低迷は政権の命運を左右するはず▼日韓両国の棟梁たちは、ある意味、もやもやとした関係を、勇を鼓して「ちゃぶ台返し」したというところなのだろうが、今後は落としどころを探ることも必要ではないか。さらなる「ちゃぶ台返し」を期待したい。

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