大切にしている言葉

吉元 大介宮地エンジニアリング株式会社
技術本部 技術開発部長
吉元 大介

私は福岡県北九州市で生まれ少年期まで過ごしました。今思えば、八幡製鉄所がすぐそばにあり、若戸大橋や関門橋といった有名な吊り橋や重要文化財の南河内橋(レンズ型トラス橋)が生活圏内にある、そんな〝鉄の町〟で育ったことが鋼橋メーカーに就職する一つのきっかけになったのかも知れません。父の転勤で千葉県の君津市に移り住み、学生時代を過ごしたのち、1989年、宮地鉄工所(現・宮地エンジニアリング)に入社し設計部に配属されました。 入社後、新入社員歓迎会での大先輩の言葉「技術者は常に最新技術を追求すること」を大切にしています。不思議なほどこの言葉が耳に残り、入社して早30年が経ち、50歳を過ぎた今尚、新しいことに挑戦するときや日々の業務で進む方向を悩んだときなど、様々な場面で私の道しるべになってくれている大切な言葉です。 私の経歴を振り返ってみると、入社後の設計部では都市高速道路橋の詳細設計や亜鉛メッキ箱桁橋の実証実験、首都高速道路の補修・補強工事などに4年ほど携わっていました。 その後、自身の転機となった技術系のシステム開発部門に異動し、自動設計製図システムや仮組立シミュレーションシステム等を同業者やベンダーの方々とともに開発しました。今では主流となったこれらのシステムを開発メンバーと知恵を出し合い、数多くの課題や失敗を乗り越え、完成する喜びを経験できた貴重な時期だったと思います。 1998年には新しく設立された設計会社に出向し、鋼橋上部工の設計に限らず、下部工の設計や架設計算などトータルでの橋の設計を学ぶ機会を与えられ、数人のメンバーと共に夜遅くまで約5年間苦楽をともにしました。 その後、念願であった原寸部門に異動し、13年間従事しました。原寸は生産情報とも呼ばれ、設計や製作ノウハウ、仮組立や架設の出来形要領など、鋼橋の生産性に関する情報が集まってきます。ここでは東京ゲートブリッジや伊良部大橋、筑後川のニールセンアーチ橋、気仙沼湾横断橋などの原寸のマネジメントの傍ら、3次元モデルを活用した仮組立情報システムの開発を行いました。この時の開発を通して感じたことは、鋼橋は一品一様の受注生産であり、他の要因も含めてシステムが完成しても、実橋で運用しながら試行錯誤を重ねていき、基幹システムとして使用できるまでには時間がかかるということです。 2019年現在所属している技術開発に異動となり、鋼橋の設計・生産・施工や、計測システム、FRP関連の技術開発を行っています。 今、ウィズコロナやデジタル革命など、世の中が大きな変革期を迎えています。 橋梁業界においては老朽化した橋や今後の大型工事への対応など端境期を迎えているといわれています。少子高齢化の時代にあって、技術者不足を補うための新技術による働き方改革は避けて通れない課題です。私も微力ながら、将来、当たり前になるであろう新しい技術を創造し、志を同じくする教育研究機関や施主、業界を問わず民間企業の皆様方とともに少しでも多くの労作を形に残し次世代につなげていきたいと考えています。 次回は、ICTやBIM/CIM関連のソフト開発などでご活躍されているオフィスケイワン社長の保田様にバトンをお渡ししたいと思います。

愛知製鋼