常にチャレンジ

久米

株式会社 南伸
代表取締役社長
久米 仁司

私が本物の橋の設計に携わったのは海外案件でした。当時(1980年頃)私は大手コンサルタントに在籍し、インドネシアに建設するサグリン水力発電プロジェクトの設計に携わっていました。電力不足に悩むインドネシアの近代化を進めるためのプロジェクトです。 当時のインドネシアは首都ジャカルタにおいても頻繁に停電が起こり、電力整備が喫緊の課題でした。サグリン発電所は出力が700MWで、総湛水面積5800haのダム湖を有する大発電所です。黒部第4発電所の出力が335MW、ダム湖である黒部湖の面積が349haであることと比較して非常に広大な湛水面積を有しています。 そのため多くの耕作地や住宅が水没しました。道路も分断され、道路の付け替えが生じました。私はそれに伴って必要になった橋の設計を担当し、100メートル級の橋を数橋設計しました。橋の形式はH型鋼を用いたトラス橋です。現在はインターネットの普及により、世界中をPC上で訪れることができ、これらの橋を自宅で眺めることができます。これらの橋は架設から40年近く経ています。橋全体が錆色になっているように見えました。航空会社のマイレージが貯まっていますので行ってみたい気分になります。 次に係わった橋はシーバースの配管橋及び歩廊橋です。シーバースとは大型タンカーの係留施設で、水深を得るために陸地から離れた海上に建設します。建設予定の海域は大型台風の常襲進路にあり設計波高は約25メートルです。橋脚はなるべく波力を受けないように鋼管トラス構造としました。 配管橋は3径間連続橋で、構造は鋼管トラス構造とし、橋脚と剛結しました。歩廊橋は揚油施設プラットホームと綱取ドルフィン等を結ぶ橋で、三角形断面の鋼管トラス橋とし、これも鋼管トラスの橋脚と剛結構造としました。特殊な環境で特殊な構造形式の橋ですが、様々な研究を行い大変貴重な経験を得ることができました。 平成半ばに同コンサルタント会社を退社し現在の沖縄の会社に転職しました。沖縄に来て数年間はPC橋の設計をほぼ毎年1橋程度の頻度で行いました。 数年前に少し変わった経験として、小規模吊橋の設計を行いました。木製吊橋の床版の老朽が激しいので床版取替え設計を受注しました。設計前に橋の各部を弾性波で腐朽の程度を調査したところ、床版を支持する横梁や門柱に損傷があり、主要部材を鋼材に変更し、床版を高強度ウレタン床に変更する設計としました。吊橋の設計は経験がなく、設計方法がわからなかったのですが、主ケーブルの懸垂形を剛性の小さい梁としてフレーム計算ができることがわかり、基本設計段階では2次元フレーム解析により設計を行いました。この吊橋は、通行止めのまま架けられていたのですが、2018年の台風で門柱が折れてしまい、現在架け替え準備が行われています。 その後の数年間は橋梁関係の業務は維持管理が主になっています。沖縄県は想像以上に地形に起伏があり、多数の橋梁が架設されています。また、歩道の広い橋が多く、大型の点検車であっても点検が困難な橋梁が多数あります。最近このような橋に対応するために、高解像度カメラを用いた橋梁点検システムを開発しました。今後は遠隔操作ができるような機能向上を図りたいと思っています。 次回は塩害橋梁の研究でお世話になった、有明工業高等専門学校の金田一男教授にお願いいたします。

愛知製鋼