様々な人との出会い

木本 輝幸川田工業株式会社
大阪支社鋼構造事業部技術部大阪技術課主幹
木本 輝幸

私が1981年川田工業に入社したころ、本格的に本州四国連絡橋の建設が始まっており、そして幸運なことにこの本四連絡橋のいくつかの工事に携わることができました。 まず入社したこの年、尾道~今治ルート(しまなみ海道)では、3径間2ヒンジ補剛トラス吊橋である因島大橋のケーブル工事が進行中であり、私はケーブルバンドをケーブルに取付けるボルトの軸力管理のため、3カ月程工事に参加させていただきました。まだ、手書きが多い時代に、パソコンでデータを打ち込んで軸力管理報告書を作成しました。 1987年、尾道~今治ルートにある生口橋鋼桁製作工事の設計部会員として約1年間、設計JVに参加しました。生口橋は、中央径間が鋼桁、側径間がPC桁の3径間連続複合箱桁斜張橋であり、鋼桁JVとPC桁JVが同じ建物内に設計JVを構え、コンクリート専門の人と一緒に詳細設計を行い、コンクリートの色々な知識を得ることができました。 主な担当は補剛桁の設計で、形状が扁平な鋼床版2主箱桁かつ斜ケーブルによって弾性的に支持されていることから有効幅や腹板座屈などがそのまま道路橋示方書を適用できないため、文献調査やFEM解析などを実施し、照査方法について検討を行いました。 25年後、開通20周年を迎えた2012年に、生口橋上部工工事に関係した本四公団職員、施工管理員及び7企業体18社によるOB会が開催され、旧交を温めるいい機会となりました。 1998年、日本道路公団四国支社より鋼・PC混合橋である新川橋を受注し、設計を担当しました。 生口橋と同様、鋼桁とPC桁を連結する混合橋梁ですが、斜張橋のため軸力が卓越する生口橋に対して、新川橋は連続桁のため曲げモーメントによる引張力が連結部に作用します。その連結部は、鋼桁とPC桁間の力の伝達がスムーズに行われるよう、マルチセル構造とし、鋼殻セル内に充填した中詰めコンクリートと後面支圧板を介して力を伝達させる構造を採用し、鋼殻セル内に用いるずれ止めは孔明き鋼板ジベルとしました。この構造と設計法の妥当性を確認するため、FEM解析や実物大相当の載荷試験を実施しました。 委員会も色々と参加させていただきましたが、中でも2005年から参加した、産・学・官による「新都市社会技術融合創造研究会」の橋梁延命化プロジェクトは大きな委員会でした。このプロジェクトは2013年まで続き、成果の一つとして、既設橋梁の維持管理に際して最適調査計測手法の選定及び最適補修補強工法の選定を支援するソフト「橋の匠」を作成しました。  現在はこのソフトの普及と振興さらに維持向上に関する活動を「一般社団法人・橋梁延命化シナリオ研究会」にて行っています。会員は、京都大学、近畿地整、コンサル、ゼネコン、PC業者、メタル業者等、優に50名を超えており、ここでも様々な人と知り合い、橋梁の維持管理に関する色々な情報を得ることができました。 このように多くの設計JVや委員会に参加させていただいたおかげで、様々な人の考え方や、専門以外の知識・情報を得ることに繋がり、これが私の財産となっています。もう還暦も過ぎ、仕事人生が短くなってきましたが、得られた知見を若手技術者へと伝承していきたいと考えています。 次は、「橋梁延命化シナリオ研究会」で大変お世話になっております、委員会幹事の中山昭二様にお願いいたします。

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