橋が繋いでくれた縁

kenichiNakamura三井住友建設株式会社
大阪支店土木部 部長代理技術グループ長
中村健一

私は1998年に熊本大学を卒業し、住友建設(現:三井住友建設)に入社しました。大学時代、崎元達郎教授の構造力学の講義で設計に興味を持ち、大津政康教授のコンクリート工学の講義でプレストレストコンクリートの技術を初めて知り感銘を受けたのがきっかけで、PC橋の設計・施工に携わりたいと思うようになりました。 入社して最初の配属は広島支店で、山陽自動車道のPC上部工事など、三つの現場でPC橋の片持ち架設や固定支保工架設を経験しました。一本の橋脚から徐々に両側に主桁を伸ばしていく片持ち架設は、PC橋の代表的な架設工法であり、初めて目の当たりにした時には、そのスケールに圧倒されたのを覚えています。 2001年に大阪支店に異動した後は、受注したPC工事の設計照査や施工計算などの技術的な現場支援、発注案件の技術提案書の作成、高速道路会社発注のPC上部工事の詳細設計などを行っています。 大阪支店に来て20年以上経ちますが、その間、社内はもちろんのこと、社外の委員会・協会活動を通じていろいろな方との出会いがあり、技術者としての私の成長を助けていただきました。 04年から参画した「PC建協ASR対策検討委員会(宮川豊章委員長)」では、PC建協関西支部の同世代の技術者とともにPC梁試験体の製作、暴露期間中の計測、載荷試験を行い、その研究成果の一部を米国テキサス州オースティンで開催された「第14回アルカリ骨材反応に関する国際会議(ICAAR2012)」で発表するという貴重な経験をさせていただきました。08年から加入している「日本材料学会PC構造部門委員会(西山峰広委員長)」は、PCに関わる建築と土木の学識者、技術者を中心としたメンバー構成です。建築と土木の垣根を超えた委員会というのは非常に珍しく、PC建築の最新技術や情報に触れることができる貴重な場です。 12年には、当時の委員長、中塚佶先生から「PC構造調査WG(土木・建築ここが一緒でここがこんなに違う)」を立ち上げ、委員会内で報告するようにとの命を受け、建築と土木のPC技術者数名で勉強したのも楽しい思い出です。 ちょっと変わった活動としては、橋梁に関わる入職者の確保と離職者の減少を目的として、建コン協、橋建協、PC建協の三協会が連携し、16年に発足した「橋の魅力発信プロジェクト」があります。普段は違う立場でそれぞれ仕事をしている若手メンバーが「橋」でつながり、一緒に考え行動することによって互いに刺激し合ったり、交流を深めたりしています。途中から加わっていただいた京都大学の高橋良和教授(土木学会関西支部FCC元代表幹事)からは、「一般の人に関心を持ってもらうためには、自分たちが楽しむことが大切」というアドバイスをいただきました。初期メンバーは私も含めほぼ引退しましたが、若い人たちに引き継がれ、今でも活動が続いています。 これからも「橋」が繋いでくれた縁を大切に、PC橋の発展と魅力発信に貢献できるよう、業務に邁進したいと思います。それでは、「橋の魅力発信プロジェクト」発足当初からお世話になっている協和設計の原口太輔さんにバトンをお渡しします。

愛知製鋼