橋と共に歩む人生

後藤 尚樹日本エンジニアリング株式会社
技術統括本部構造技術部橋梁設計室 室長
後藤 尚樹

橋梁分野の仕事を始めて、25年となります。近畿大学理工学部土木工学科を卒業後、橋梁技術者を目指し、最初は、鋼橋の施工管理よりスタートしました。 その後、設計分野に転身し、多くの橋梁事業に様々な立場で参画して参りました。今まで、山あり谷ありの険しい道のりを私なりに歩んできたつもりですが、47歳となった現在でも、まだまだ、平坦な道ではなく、毎年、様々な難題が発生し、その都度、多くの方々の力をお借りし、1人ではなく、他社の諸先輩方、上司、同僚と一緒に乗り切っております。 また、私の妻も元同僚で、私の良き理解者として、支えになってくれています。1人では、何事も達成する事は、出来ず、日々感謝の毎日で御座います。特に私の人生に大きなインパクトを与えて頂いた師匠的な大先輩方にも伝えきれないほどの感謝をしております。 現在、私の業務は、新設橋梁の詳細設計、既設橋梁の耐震設計が主な内容となります。各橋梁で、線形が類似していても全く同じ条件で同じ構造物となる事は無く、それぞれが担当技術者の個性によって、細部に渡り変化があります。勿論、間違いではなく、安全基準を満足した上で製作面・施工面・工程面等の何を重視したかによって、見た目には解らない点も踏まえ、個性が見えてきます。 時には、他技術者の設計成果物を確認していると様々な不具合を発見する事があります。昨今、設計ツールとして、昔とは違い、自動設計ソフト等の開発が進み、ワード・エクセルで人の手によって作成する計算書、一から作成する図面などは少なくなってきました。設計に必要とする時間も減り、業務効率化によって、決定根拠、理由、経緯などを深く知らなくても、経験3年の技術者で設計業務が完了してしまう業界になってきました。 管理職としての立場では、うれしい事でもありますが、ここに私は、「待った」と言いたいです。設計技術者である限り、何故この部材は必要なのか?何故このような断面となったのか?という「何故」という言葉を自問自答しながら若手技術者には、設計を堪能して頂きたいと考えています。 必ず、各構造にはその形状の理由があり、その本質を見抜き、断面を決めて頂きたいです。その奥深く考えて、決めた事により、性能設計と言われる現在のニーズに答えた、安全性、経済性、機能性を兼ね備えた構造となり、人為的な間違いも減ると思います。 ただし、自動設計としても、所詮、人が操作しているので、間違いは、無くなりません。大事なのは、思い込みを無くし、客観的にチェックを行い、更には、違う目、違う立場の人に見て貰う事で、大きな手戻り、取替えしのつかない事態を回避する事が出来ると思います。 私も過去に大きな間違いをしたことがあります。その時、大変苦い思いをし、多くの方々に助けられました。「何故」という気持ちを常に持ち、過信することなく、客観的に物事を捉え、時には人の目を借りる事で、間違いの少ない機能性、経済性に優れた橋梁構造物は、出来ると信じております。 最後になりますが、多くの大プロイジェクトとなるような橋梁事業に参画させて頂く機会に恵まれ、時にはフィリピンやシンガポールといった海外案件で現地へ2カ月間赴任させて頂き、大変幸せな橋梁人生を歩んでいると感じております。 また、失敗を恐れず、挑戦できる環境の中で、仕事に従事しており、今後もより多くの橋梁を設計し、社会に貢献していきたいと考えております。次は、中央復建コンサルタンツの加藤慎吾さんにバトンを渡したいと思います。

愛知製鋼