橋は美しい

秀熊佑哉

広島大学大学院
先進理工系科学研究科 教授
半井 健一郎

私が土木工学で扱う対象としての橋を初めて認識したのは、大学2年で進学先を決めるために土木工学科の紹介を聞いたときでした。たしか景観研究室の篠原修先生が担当されていたように記憶していますが、次々に投影される写真から、自然の中の橋は美しいものだと感じた瞬間でもありました。
その後、土木工学科に進学しましたが、橋梁関係で特に印象に残っているのは、藤野陽三先生の少人数セミナー「風景画教室」でした。週末に橋のスケッチに出掛けました。美術大学の先生からのご助言もいただきつつ、じっくりと橋の細部まで観察する贅沢な時間で、やはり橋は美しいものでした。教員となった現在、自身の鉄筋コンクリート構造の講義では、コンクリート構造物のスケッチを課題としています。
修士課程では土質研究室に在籍し、龍岡文夫先生のご指導のもと、補強土の研究に携わりました。当時、研究室ではプレローディド・プレストレスト補強土の開発が進められており、助手の内村太郎先生と先輩の篠田昌弘さんの研究に加わり、JR九州篠栗線の高架化工事の仮線に適用された橋脚での現場測定に参加しました。研究室での研究成果が実務につながるという、工学研究の魅力を強く感じた経験でした。
その後、コンクリート工学を専門とし、前川宏一先生、岸利治先生、石田哲也先生のご指導のもと、主にセメント系材料の耐久性を中心とした基礎研究を行うようになりました。その一方で、高架橋におけるASRによる鉄筋破断や地震によるせん断破壊などの構造解析にも関わり、基礎研究が実構造物の問題解決につながることを学びました。
東京大学で助手を務めた後は群馬大学に赴任し、辻幸和先生の研究室に加わりました。辻先生の運転する車に乗せていただくことも多くありましたが、道中、特徴的な橋梁があると先生は車を停め、丁寧に解説してくださいました。また、スイスでの在外研究の機会もいただき、ロベール・マイヤールの代表作であるザルギナトーベル橋には何度も行くことができました。
なかでも石田先生と訪れた日には晴天に恵まれ、青空との対比によってコンクリート橋の美しさが一層際立って見えました。この橋は辻先生ともご一緒したのですが、先生からは、過去の訪問時に行くことのできなかったウァルチール橋もリクエストいただき、ご案内しました。もともとの橋は歩道橋として保存され、隣に新しい橋が建設されているのですが、旧橋を渡り切ると、辻先生が突然、道路わきの急斜面を登り始めて驚きました。その小高い丘の中腹からは2つの橋が一望でき、先生を追いかけた私もスイスの山中に架かる美しい橋の全景を堪能することができました。
最近では、コンクリートの耐久性に関連し、実際の橋梁に生じる変状を学ぶ機会も増えました。特にこの「橋歴書」のバトンを託してくださったNEXCOエンジニアリング中国の山本雅行さんとは、多くの実橋梁で非破壊試験による測定を行い、新設時の品質評価とは異なる難しさに向き合いました。これからも、実務者とともに実構造物に学び、美しい橋を守るための研究を続けていきたいと思います。
山本さんからのバトンは、群馬大学の辻幸和先生にお渡しいたします。

愛知製鋼