橋梁との出会い

金田一男有明工業高等専門学校
創造工学科 人間・福祉工学系 教授
金田 一男

私は1996年3月琉球大学での留学生活に終止符を打ち、修士課程を修了し、沖縄県を本拠地とする株式会社ホープに入社させて頂きました。2016年9月、有明工業高等専門学校に赴任するまでの約20年間、素晴らしい会社に恵まれ、橋梁の予備・詳細調査設計、既設橋梁の補修補強設計および橋梁維持管理業務を沢山従事させて頂きました。ここでは、特に印象に残った3業務について述べます。  業務1は、管理技術者として橋長100メートルの農道橋を設計しました。本橋は沖縄県島の上県営農道の山間部に位置し、地元のシンボルとなっています。 本橋は上部工幅員7・2メートル、曲率半径75メートル、縦断勾配5・2%のPC2径間連続Tラーメン箱桁橋であり、下部工は逆T橋台2基と高さ約32メートルの橋脚で構成され、両橋台に全方向反力分散ゴム支承を採用しています。 本橋の地震時挙動が極めて複雑であるため、橋梁全体形の動的解析結果に基づいて詳細設計を行いました。本橋は2013年2月に開通し、筆者自身もその開通セレモニーに参加出来た事もあり、とても達成感の高い橋梁設計業務でした。 業務2は、全国の小学校教科書の表紙にも写真が採用された沖縄県道瀬底健堅線に位置する瀬底大橋の耐震補強設計について述べます。本橋は昭和55年の基準よりも以前に設計されたものであり、橋長762メートルの海上長大橋であります。 瀬底島への唯一のアクセル道路や観光ルートである本橋梁の重要性・経済性より、本橋梁の下部工(橋脚14基)の耐震補強に「炭素繊維シートと機械継手を用いた鋼板によるRC橋脚の混合巻き立て補強工法」を採用しました。 この工法は、水中部に水中で施工可能な機械継手を用いた鋼板巻き立て工法を適用し、気中部では経済性がよく、施工しやすい炭素繊維巻き立て工法を適用しました。 炭素繊維シートと鋼板との定着部に関しては、当時九州大学教授である日野伸一先生の指導のもとで研究を行い、上記工法の適性を検証しました。ここに示す工法の採用により、十数億円の工事費削減が図れました。その詳細は、①第12回地震時保有耐力法に基づく橋梁等構造の耐震設計に関するシンポジウム講演論文集、pp.37|46、2009.1、②コンクリート工学会年次論文集、Vol.30、No.3、pp.721|726、2008.7を参考にされたい。 業務3は、沖縄県橋梁長寿命化修繕計画策定業務に担当技術者として従事しました。本業務では県が管理している672橋(2010年度当時)に対して、その維持管理の基本方針等を検討しました。 筆者は、管理対象橋梁中に含まれている海上長大橋、離島を結ぶ離島架橋などの重要橋梁の耐震性能に着目し、「長寿命化修繕計画」において、今後のこれらの重要橋梁の耐震補強基本方針を示すと同時に、耐震補強工事の工事費を長寿命化修繕計画に盛り込みました。これはその後の沖縄県橋梁耐震補強工事の展開に寄与したものと考えます。 現在、筆者は沖縄県を離れ、福岡県大牟田市にある有明高専でRCピロティ建築の耐震補強を中心に研究を行っていますが、沖縄県のような塩害厳しい地域では、耐食性の高い橋梁構造物の開発が重要と考えております。これに関しては、現在、琉球大学の富山潤先生と共にCFRP仕様PC桁の研究を行っております。 次回は、沖縄県で橋梁の維持管理業務等にご活躍されています、福岡県出身の山口一宇氏にお願いします。

愛知製鋼