橋梁に魅せられて

長谷川 剛ドーピー建設工業株式会社
技術部 東京技術グループ 課長
長谷川 剛

私がプレストレストコンクリートに接する機会を得たのは、大学でコンクリート構造研究室に配属が決まり、山崎淳先生にご指導いただいた時でした。 当時の研究室では、大偏心外ケーブル構造の研究が先輩方から受け継がれており、実験室には大型の梁試験体が鎮座していました。 大偏心外ケーブルとは何ぞや?と思いながらもPC構造に触れ、同期の仲間とともに新しいPC構造を目指して卒業研究に励みました。  橋梁の構造に興味を持ちはじめてからは、橋梁を見に行くことが趣味になりました。 仲間からは「橋バカ」と呼ばれ、出先で橋を見るために寄り道をすることが多く、半ば呆れられていました。 大学を卒業し、1998年4月に入社してから早いもので25年になります。はじめての赴任先は静岡県掛川市の工場敷地内にある静岡支店の設計部門でした。 集団研修が終わり、配属早々から設計実務に携わることができ、忙しいながらも毎日やりがいを感じながら吸収することの多い日々だったことを思い出します。 一年目が終わる頃に、初めて詳細設計を任せてもらう機会がありました。ポストテンション方式のPC単純T桁橋で、設計が終わるとそのまま現場業務に研修職員として携わることができました。 自分で設計した橋梁が、実際に構造物になるなかで、人の役に立つ構造物を作っているのだと実感したことを覚えています。 今でも近くに行くことがあると、その橋梁を見に行き、当時を思い出しています。 その後、大阪支店へ転勤し、現場代理人として現場業務を経験し、現在は東京で委員会業務などに参加させてもらい、優秀な技術者の方々と知り合いながら、多くのことを学ばせて頂いています。 中でも、静岡県富士宮市の白糸ノ滝の滝つぼ周辺整備工事で携わった「滝見橋」(バランスド扁平アーチ橋)では、PC工学会賞、グッドデザイン賞、JCI作品賞、土木学会デザイン賞最優秀賞など、多くの賞を受賞する経験ができ、コンセプトデザインを担当された日本大学の関文夫教授には多大なご指導を頂いたうえ、「魅せる橋梁」について学ばせて頂きました。 また、三社JⅤで受注した新東名高速道路の秋山高架橋では、遅咲きながら初めてJⅤ設計室に詰めて設計業務を行い、今まで知ることのなかった他社の業務の進め方や考え方、打合せの方法などプロジェクトチームでの経験から、新たな一面を学びました。 今回、橋歴書のお話を頂いたのも、このJⅤ設計室でご一緒させていただいたコーアツ工業の吉滿さんとご一緒できたお陰で、自分の社会人人生を振り返る良いきっかけになりました。 現在は、新東名高速道路河内川橋工事のプレキャストPC床版を設計・製作させていただいており、国内最大級の橋梁工事の一部に携わらせて頂いています。 大学の研究室の先輩から、こんな製品を製作できないかとご相談を頂いたことから始まり、改めて人と人とのつながりが大切であることを実感しています。 今後もそのようなつながりを大切にしながら、橋梁技術者として精進していきたいと思います。 次回は、河内川橋工事でお世話になっている鹿島建設の大塚康晴さんにバトンをお渡ししたいと思います。

愛知製鋼