瀬戸大橋とメッシーナ海峡大橋

徳永 宗正公益財団法人 鉃道総合技術研究所
鉄道力学研究部構造力学研究室 主任研究員
徳永 宗正

JR西日本の北健志さんからリレーを引き継ぎました。私がM1の時に鉄道総研の鋼複合研究室にインターンシップで滞在していた時に、北さんは同研究室に出向されていて、現在でも一緒に仕事をさせて頂いております。 私は橋梁の動的問題、特に鉄道橋梁を専門にしている社会人歴13年、四国出身の研究者です。 現在は橋を専門としていると言えるようになってきた気はしますが、橋りょうを目的としてこの道に進んだわけではありませんでした。 よくある話ですが、大学に入学した当初は建築家を志望していましたが、入学後勉強せず、専攻の振り分けの際に成績が悪く人気がなかった土木専攻に配属されました。土木専攻となったにも関わらず建築専攻の講義を履修していて学部を卒業した時には、単位の半分近くが建築専攻のもので占められていました。カラトラバなどの橋梁デザイナーに憧れて学部時代を過ごしましたが、橋梁について具体的に勉強するようになったのは、学部4年生の時に構造工学領域に配属になり小野潔先生(当時阪大、現早稲田大)のもとで鋼橋の設計法の研究を始めてからでした。 元々物理や数学は好きでしたので、これらの知識を多用する橋梁の構造工学は私にとっては知的好奇心を刺激する対象でした。 実験、解析から論文の読み書きといった研究という行為自体に対して自分が好きで向いていると気がついたため、研究者という道に進むことにして鉄道総研に入社しました。それ以降、高速列車の通過時や巨大地震が発生した場合の、橋梁の動的応答問題に関する研究テーマを中心に、新幹線などの特殊な新設長大橋などを対象としたシミュレーションや、橋梁の維持管理上の課題や災害に対応するためのコンサルティング、橋梁の設計や維持管理に関する技術基準の改定などの職務に当たっています。 この間、JR四国、ミラノ工科大学への出向を経験しました。JR四国では2メートルの開渠から瀬戸大橋までの橋梁やトンネルの検査実務を担当しました。印象的であったのは、瀬戸大橋の橋梁とアバットの境界で多用されている、線路方向や鉛直方向の軌道の変形を緩和するための緩衝桁という技術です。この技術は国鉄時代の過去の鉄道総研の先輩が開発したもので、後世でこの装置の維持管理に関われたことはよい刺激になりました。 ミラノ工科大学では、鉄道車両と橋梁の運動を解析するシミュレーション技術について共同研究を進めていました。イタリア本土とシチリア島を結ぶメッシーナ海峡大橋を対象とした数値解析を実施していました。 ミラノ工科大学のチームは橋梁から車両までの風や地震に対する動的問題を体系的に扱っていました。彼らもメッシーナ海峡大橋のプロジェクトについて検討するために、80~90年代に日本の長大橋技術の勉強のために来日していたようです。 私は橋そのものに熱い想いを持っているというタイプではありませんが、振り返ってみれば後付けになりますが、四国出身で瀬戸大橋、明石海峡大橋などの長大橋の建設を幼少期から身近に観察し、通算100回以上これらの橋を利用してきました。また出向中には瀬戸大橋の鉄道部の維持管理や、メッシーナ海峡大橋の数値解析などを経験し、長大橋に縁がある人生を歩んできたようです。日本で考えられる鉄道を通すための長大橋というと、瀬戸大橋に新幹線を通す四国新幹線がありますが、私が現役の間にプロジェクトが実現されることを夢に楽しみにしています。 リレーのたすきは四国の素晴らしいエンジニア&研究者の角野拓真さんへ渡します。

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