身近な橋との関わり

福田 博一西鉄シー・イー・コンサルタント株式会社
社会インフラ部 グループリーダー(次長)
福田 博一

思い返せば、小学生の頃、絵画コンクールで学校近くの橋をスケッチして応募したことがありました。題材は自由であったのですが、橋をメインにして風景画を描いたのですから、この時すでに橋の魅力にとりつかれていたのかもしれません。 私は、現在、福岡の建設コンサルタントで橋梁設計に携わっていますが、この業界への就職を決めたのも学生の頃、佐賀県の呼子大橋のたもとで夜釣りをしていた時見た呼子大橋の雄大さと闇夜に浮かび上がる美しさに感動し、このような橋の設計者になりたいと感じたからでした。  1995年入社時、道路設計グループに配属され、道路橋計画のもととなる道路設計を担当することで、線形決定のポイントや周辺家屋、交差道路との調整の大切さを学びました。  初めて橋梁設計の担当者となったのは、入社4年目でした。河川橋の詳細設計で、おもに私は、迂回路や仮橋などの仮設設計を担当しました。橋梁本体の計画や設計計算について、上司から丁寧な指導を頂いたおかげで業務を完了できました。  工事着手後は、幾度となく現場に出向いて、工事の進捗と設計図の通りに完成するところをまのあたりにして、設計という仕事の面白さとやりがいを感じました。  新設橋梁の設計業務と併行して橋梁の維持管理業務を実施していた2009年頃に、維持管理の重要性をありありと感じる出来事が身近で起こりました。  駅前広場のペデストリアンデッキの一部の床版が陥没し、地上歩道部にタイルや腐食した鋼材が落下してしまったのです。駅前のため昼間は通行人の往来も多い場所ですが、陥没したのが深夜から未明の間であったため、幸いにも第三者被害は発生しませんでした。もし、これが通学時間帯や買い物客の多い時間帯であったらと思うと今でもゾッとします。  陥没の直接的な原因は、デッキプレートと主桁の接続部が腐食によって破断したものでした。腐食に至った要因は、橋面の排水勾配が取れておらず、排水桝も設けられていなかったことから、漏水による腐食進行と考えられました。また、桁下・桁側面をカバーで覆っていたので点検が困難であり、腐食進行を早期に発見できなかったことも陥没に至った要因と考えられました。  ペデストリアンデッキの全体を緊急点検したところ、排水桝にゴミが詰まってしまい、排水機能が果たせない状況となっており、定期点検や補修工事と同様に日常の橋面清掃の重要性を認識した事例でした。このことをきっかけに、新設橋梁設計では、維持管理の容易性や滞水しないディティールを配慮することに心掛けています。  現在「平成29年7月九州北部豪雨」の災害復旧の橋梁設計を行っています。この災害で被災した朝倉は私の生まれ故郷でもあります。復旧する橋梁設計は、二度と災害に見舞われることなく、仮住まいから戻られる住民の皆さまが安全安心と被災前以上に使いやすさを感じられることを念頭に設計を行っています。  呼子大橋のようなランドマーク的な橋梁設計にはまだ関わっていませんが、生活に密着した橋の設計、維持管理を担っていることにやりがいを感じています。  これからも地域に密着して安全安心を届けられる橋の設計を行っていきたいと思います。  最後に、これまでご指導頂いた多くの方々のおかげで橋の設計に携われていることに感謝し、この場をお借りしてお礼申し上げます。  次回は、初めての橋梁設計にご指導頂いた、濱口憲康様へバトンをお渡し致します。

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