鉄道工事で学んだこと

高橋 大輔株式会社横河ブリッジ
東京工事本部東京工事第一部主査
高橋 大輔

中学生のころから、建設業に魅力を感じていました。シャイで目立ちたがり屋の私は、とにかく目立つ仕事とはなんだろう?と考えた末、選んだのが『橋』でした。振り返ると、社会人になり早20年が過ぎ、そのほとんどを工事部として過ごしております。関東を中心とした工事現場に配属され、規模は大小ありますが、約30現場を経験してきました。その中でも鉄道工事に15年、架替を含めた撤去工事については9年従事してきました。 今回は、入社2年目から約5年間従事した新宿こ線橋架替工事について紹介いたします。当現場は、日本最大級のターミナル・新宿駅の南口に隣接し、大正時代に架設された橋の老朽化と交通量の増加に伴う架替で、幅員を現橋の30mから50mに拡幅する工事でした。 架設工法としては、架設桁を使用した横取り・手延べ送出し・クレーン架設など多くの工法がありました。短時間で確実な作業が可能な機材として、自走台車や特殊ジャッキなどを多く使用しました。当時の私にとっては、初めて目にするものばかりで興味津々。先輩方に教えていただき、特殊な鉄道工事の仕事を学びました。 また撤去した旧桁はリベット接合であり、職人さん達から『カシメ屋』の話を聞かされ、その職人技に感動したことを今でも覚えています。 当時、新宿駅の1日の乗降客はJR私鉄各線を合わせると約320万人、そのうち約40万人が南口を利用しており、駅前はとにかく人が多かった印象があります。事務所が隣の代々木駅にあり、現場まで毎日徒歩移動する中、田舎者の私は、高層ビルを見上げ『高いなぁ』、人ごみの中でキョロキョロし『人多いなぁ』と思い、出来るだけ人の少ない道を探す日々を送っていました。 新宿駅のほとんどの工事は、山手線の終電~初電間(約3時間)の夜間作業でした。実際は、線路閉鎖間合いや、き電停止間合いでの作業となり、2時間程度の作業時間しかありません。このような工事のポイントとして、一番重要なのは『段取り』です。作業開始までの入念な準備なくして、工事の進捗なし。作業計画・機材準備・競合・作業打合せと、やることは盛りだくさんです。1日・1週間・1カ月・1年の工程を把握し、コントロールすることの難しさを学びましが、日々の夜間作業の中で『あと5分で何ができるか』を常に考え行動し続けた結果、今では数か月先の工程は大きな狂いもなく、自分の思い通りに調整できるようになりました。 新宿では、約5年間も昼夜逆転した生活を送っていたこととなります。世間の人が仕事後に楽しく騒いでいる姿を横目で見ながら、仕事に没頭する日々、何とも言えない虚しさもありましたが、節目節目で現場の変化を見て、橋が完成していく姿に感動し、仕事の達成感を得ることができました。 また、夜間の鉄道工事に携わることで、普段当たり前のように乗っている電車も、深夜の鉄道保守作業があるからこそ、安全に乗車できるということを目の当たりにし、世の中の『当たり前』の裏には、相当な数の努力があることを知りました。 最後に、私はよく『乗り越えられない壁』にぶつかりますが、最近は乗り越えられない理由より、どうやれば乗り越えられるかを考えます。向かい風だって、背中で受け止めれば、追い風になるし。考え方次第で今見ている世界が変わります。 次はいつも足場材リースでお世話になっている『安全と効率という命題に向き合い続ける会社』杉孝の濵野圭太橋梁営業所所長にバトンをお渡しします。

愛知製鋼