3つの視点と+1

谷口 潤CS―LABO株式会社
代表取締役
谷口 潤

私にとって橋梁は公共事業に関わる発注者、施工者、設計者の3つの視点を経験させてくれ、様々な成長する機会や課題を与えて続けてくれています。 1999年に大学を卒業して現在3社目で、これまで橋歴書を執筆されてきた方々のように最初から志高く橋梁に携わったわけではありませんでした。就職活動もろくにせず、大学の掲示板に地元の建設コンサルの会社案内を見て試験を受けて、大工大の井上晋教授(現大学学長)の研究室だったことを伝えると橋梁を主とする部署に配属。これが橋梁技術者としてのスタートでした。研究室も、お世話になっていた先輩が大学院(後の大工大の三方教授)におられたのが主な選んだ理由でした。 入社後の橋梁との最初の関わりは動的解析でした。本格的に動的解析が導入される直前でしたので事例は少なく、ソフトはUIが難しく解析時間もかかり、私の基礎学力不足もあり数カ月間は本当に苦労しました。 もっと橋梁に関わりたいと02年に協和設計に転職しました。第二京阪道路の設計は都市部で、地下には送水管があり、交差道路も高架化するため三層構造と複雑で、業務期間中は毎日終電でもいつ終わるのかと思いました。 05年から浪速国道に3年出向し、設計した現場の監理に携わり、この時に知り合った発注者や建設会社の方々には多くのことを学ばせて頂き、計算、報告書、机上の工費や施工性が仕事の全てと考えていた価値観を大きく変える転機となりました。私の配慮の足りない縮尺1/100程度の設計図は、現場の創意工夫やノウハウで1/1モデルが構築されていること、発注者は設計や施工の監理・監督はもとより、何百億円という事業費を執行しつつ関係機関との協議など多岐に渡る調整に奔走されていることを知りました。 その後は東海環状、御殿場BP、清滝生駒など関西、中部圏の様々な路線の鋼、コンクリート橋の設計に携わり、NEXCO大規模更新等では建設会社さんから依頼を頂いておりました。大野油坂道路は17年から7橋の設計に着手し、僅か5年の22年に供用出来ました。この経験で、お世話になった関係者の方々には感謝の念に堪えません。 社外活動としては、09年から18年まで建コン近畿支部の橋梁の維持管理研究委員会に参加し、PC建協さんに協力頂き合同現場見学会を企画して、同世代の橋梁技術者の方々と交流出来たことは良い思い出です。参加当初は維持管理系が未経験で他社の先輩方に随分助けて頂きました。 出向等の環境の変化や専門の異なる社外の技術者の方々との交流は、新たな視点と知見を得る機会でもあることに気がつき、点検調査、補修、耐震補強業務など何でも取り組むようにしました。 昨年に協和設計を退職し、会社設立して橋梁を通じて4つめの視点を経験中です。働き方改革の傍らで多忙なマネージメント層のお手伝いやスポットコンサルが主の会社です。 有り難いことにバトンを下さった川田工業の亀村さんをはじめ様々な方から気に掛けて頂き、忙しくさせて頂いています。より多くの方に御贔屓頂けるよう精進したいと思います。 次は私が起業を考える機会を頂いた1人であるショーボンド建設の山下幸生様にバトンをお渡しします。

愛知製鋼