橋梁設計の楽しさに出会って

大野 一成東京コンサルタンツ株式会社
執行役員東日本副支社長関東支店長
大野 一成

建設コンサルタント業界に身を置いて、まもなく四十年になります。しかし、学生時代から橋梁設計を志していたわけではありません。就職の機会を得た会社で、たまたま橋梁設計に携わることになり、私の技術者人生は始まりました。
有り難いことに、入社当初から主担当として橋梁設計に関わる機会を得ましたが、最初の5年間は日々学ぶことばかりでした。上司の指示に応えるのに精一杯で、主担当として十分に役割を果たせているという実感はなく、橋梁設計の楽しさを感じる余裕はありませんでした。
その意識が変わったのは、予備設計から詳細設計まで一貫して携わった「橋脚高が大きく異なる3径間連続PCラーメン箱桁橋」の設計でした。最適橋種の選定に至る過程やその根拠、構造形式やプロポーションを定める考え方、それらを発注者に納得してもらうための説明には、多くの苦労がありました。
しかし、課題を一つひとつ整理して、形にしていく過程には、それまでにない高揚感がありました。それまで〝作業〟として向き合っていた設計が、〝創造〟へと変わった瞬間であり、橋梁設計の楽しさに出会えた原点でもありました。とりわけ、プロポーションを検討する過程では、橋脚高の違いが橋梁全体のプロポーションや構造挙動に与える影響を読み解く難しさがありました。
設計計算に苦労していた私に、上司は「頭の中に橋の模型をつくり、様々な状態を思い描きながら考えて設計計算しなければならない」と助言してくれました。この言葉をきっかけに、イメージと理論を往復しながら考えることの大切さを学び、技術者としての視野を広げることができたと感じています。
その後、「豪雪地で、アーチ支間が200メートルを超え、橋下空間が低く、平面曲線と拡幅を伴う中路式鋼アーチ橋」の設計に携わったことが、橋梁設計の楽しさを更に強いものにしてくれました。落雪対策、3部材交差部の安全性確保、斜め大口径深礎やアーチ拱台の施工など、難題の多い橋でしたが、それらを一つずつ乗り越えるたびに、技術者としての達成感と成長を深く感じました。
こうした経験を通じて、橋梁設計を「楽しい」と感じられるかは、与えられた条件の中でいかに主体的に考え、イメージと理論を往復させながら課題解決に取り組めるかにかかっているのではないかと感じています。
今後は、自らが育てていただいたように、若手技術者が早い段階から主体的に橋梁設計に関われる環境作りに力を注ぎ、橋梁設計の楽しさを次の世代へと繋いでいきたいと思います。
振り返れば、橋梁設計が単なる〝作業〟から〝創造〟へと変わった瞬間こそが、私にとっての大きな転機であり、技術者人生の質を高めてくれました。一つひとつの課題を乗り越える中で、得られる高揚感と達成感を大切にしながら、これからも橋梁設計の楽しさを味わっていきたいと思います。
次は、長年にわたり公私ともに大変お世話になっております協和設計代表取締役社長の坪本正彦さんにバトンをお渡しします。

愛知製鋼