心に残る橋を栃木に

高橋 昌宏株式会社富貴沢建設コンサルタンツ
専務取締役
高橋 昌宏

中橋(栃木県足利市)のアーチ橋移設工事でお世話になった巴コーポレーションの西川様のご紹介により、橋への思いについて執筆する機会を頂きました。
私が橋梁設計に初めて携わったのは、入社から5年が過ぎた頃で、それまでは河川や道路設計を担当していました。入社10年後に、研修で3週間海外へ行く機会があり、構造的に美しく合理的な橋を数多く見ることができました。この経験は、橋梁設計に対する大きな財産となったと感じています。当社は地元である栃木県内の橋梁設計を多く手がけており、身近に橋の状態を確認できます。特に、自身が設計した橋はつい足を止めて、健全度を確かめてしまいます。
思い出に残る橋は実に多くありますが、構造や景観で特に工夫したものを紹介します。
まず、県で初めての本格的な斜張橋です。国内外の斜張橋について調査し、主塔形状を一覧表にまとめました。主塔のデザインが、景観やシンボル性で重要と考えたからです。社内で製作した模型を用いて検討を重ね、逆V型の1主塔を採用しました。シンプルでシャープな景観となり、満足しています。また、吊桁以外も連続構造とし、活荷重による撓みの減少と走行性の向上を図りました。4径間連続構造は、当時国内初でした。今年も点検で主塔に上ってきました。
次に、花見で賑わう公園と遊園地を結ぶ歩道橋についてです。公園には展望台のある電波塔があり、上路形式が条件でした。一般的にはアーチ橋が選ばれますが、「遊び心とシンボリック性」を重視し、鋼製主桁を有する吊床版橋を採用しました。桁下には撓み軽減のため補助ケーブルを設置し、ねじれ剛性増加と景観向上のためハンガーを斜めに配置しました。支間長150メートルは、国内最大級でした。
続いて、観光目的の歩道吊橋です。「温泉と滝と吊橋の町」というキャッチフレーズ通り、町には多くの吊橋がありました。
観光の目玉として、無補剛形式で当時日本一の支間長320メートルとなる吊橋が計画されました。耐風索は地形的制約から水平に近く、角度を変化させて検討しましたが、構造的に良いとされる45度と比べても大きな差は見られませんでした。耐風安定性確保のため、中央部にグレーチング床版による風抜きを設け、木床版取替時の足場としても利用できるなど、維持管理も容易にしました。
また、下路式ローゼ橋では、補剛桁や鉛直材が強調されてしまい、アーチ形状の美しさが損なわれることが気になっていました。そこで、補剛桁をアーチの内側に配置し、ブラケットを設置してアーチとケーブルで繋ぐことで、重厚感を軽減し、走行性も向上させました。
他にも、全断面溶接構造のTラーメン橋、上路式ブレースドリブアーチ橋、パイプを用いた縦置き床版形式の歩道橋なども設計することができました。
これまで、多くの技術者の方々と出会い、ご指導を賜りました。また、4橋の風洞実験に携わる機会を頂けたことは、私にとってかけがえのない貴重な経験となりました。今後も、栃木に人々の心に残る橋ができればと思います。
次は、日頃よりお世話になっている東京コンサルタンツの大野一成様へバトンを繋ぎます。

愛知製鋼