一貫して職人のこだわり

井上 浩吉

株式会社西工務店
東京支店副支店長
井上 浩吉さん

2002年に、岡山県を本社に塗装工事など全国展開する同社に入社。既に別会社で塗装職人として活躍しており、間もなく現場代理人となり、現在に至るまで年間のほとんどを塗装現場で過ごしてきた。06年に現職。
09年、秋田自動車道の吉田川橋の塗替えを担当する。塩害で腐食が激しい橋梁で、ケレンをかけ錆を取り除いても内部から水分が染み出てくる。
「当時の塗装系ではケレン後の発錆に対処できず、結局、超厚膜エポキシ樹脂を使って何とかしのぎました」。苦労しただけに思い出に残る現場という。
後進を育てる立場として若手には現場をよく見ろと教える。
「かつて、着工前の現場に行った時、目視だけでも設計面積が少ないと感じました、詳細に調べると実際の面積は図面の1・5倍はありましたね」
当然、設計変更が認められ事なきを得た。現場の下調べの重要性を痛感したそうだ。
「それに、現場代理人には第3者被害の防止、作業員の安全を常に考える必要がある。現場の問題点をきちんと把握することで、不測の事態に対処できます」
父、兄とも塗装を生業とする職人一家で育ち、自然、同じ道を歩んできた。この業界に入った頃は、ペイントローラーは普及しておらず、はけ塗りが一般的。「はけ塗りの基本を身につけた職人の仕事は品質がまるで違う。ムラのない塗装面はつやが出て光沢に富み、何より密着度が高いので塗装が長持ちします」。機材は変化しても品質確保への地道な努力や、職人のこだわりは当時も今も変わらない。趣味は楽器演奏。金管楽器のユーフォニアムがお気に入り。埼玉県出身。61歳。(川村淳一)

愛知製鋼