初心忘れず謙虚な心で

OLYMPUS DIGITAL CAMERA株式会社日本ピーエス
技術本部執行役員本部長
濵岡 弘二

父が建築関係の仕事をしていた関係から、私は小さいころから「もの」を造る仕事に就きたいと考えていました。そのため、大学もほとんど何も考えず、土木工学科に入学しました。しかし、具体的に何を造りたいのか決まっていなかったことから、大学も修士課程も入りやすい研究室に入りました。
そんな私が、「橋梁建設」に目覚めたのは、修士課程時代に見た「瀬戸大橋」の建設でした。友人と岡山県の鷲羽山に遊びに行った際に、瀬戸大橋の建設現場を見て、人間がこんな大きな構造物つくっていることに大きな衝撃を感じました。その時は時間が無かったため、詳細は見学できませんでしたが、後日1人で出向き現場見学が可能な遊覧船に乗船するなどして、改めてその壮大さに感激しました。それと同時に、こんな大きなプロジェクトに携わるのは難しいとしても、橋梁に係わる仕事をしたいという気持ちが心の中で大きくなっていきました。
そこで、地元の福井県敦賀市に本社があり全国的に展開している橋梁メーカーである、日本ピーエスコンクリート(現?:?日本ピーエス)に入社しました。入社後数年はPC橋の設計を行いながら、現場の施工管理も担当しました。
最初に携わった現場は、一級河川を渡る橋長約120㍍の3径間ポストテンションT桁橋の橋梁建設でした。当たり前のことですが、施工前は対岸に行くには自動車で迂回する必要がありますが、主桁が架設された時点で歩いて対岸に行くことができるようになり、主桁架設終了と同時に最初に対岸に徒歩で渡ったとき、〝この仕事に就いて本当に良かったな〟と感動したことを今でも鮮明に覚えています。
その後は、新設のPC橋やPCタンクの施工管理に携わるとともに、電気防食工法による塩害補修工事や外ケーブル工法による補強工事などのメンテナンス工事の現場にも従事し、時代の要請と相まって社内外のインフラの維持管理関係の業務を行うこととなりました。特に社外での活動では、プレストレスト・コンクリート建設業協会(通称「PC建協」)のメンテナンス部会(現?:?保全補修部会)の創設から昨年までの14年間もの間、委員として参加させていただきいろんな方から多くのことを学ばさせていただきました。
さらに、新技術や新工法の研究を行う開発部門も担当することになり、火力発電所から排出される石炭灰を原料とした人工軽量骨材のPCへの適用研究や高強度PC鋼材のプレテンション部材への適用研究などを行いました。これら2つの研究を題材として、2008年に金沢大学大学院の前川幸次先生のもとで博士(工学)を授与していただくことができました。学位取得にご支援いただいた方々に紙面を借りて感謝申し上げます。
昨年度から本部長という役目を仰せつかり、今までのプレイヤーという立場からマネジャーという立場に変わりました。しかし、今まで経験や諸先輩方からの教えを活かして、この役目を果たしていきたいと思いますし、果たせると自負しています。そのためには、瀬戸大橋建設の現場見学での感激や最初の現場従事での感動を忘れずに、役目は変わっても何事にも謙虚な気持ちで向き合っていく所存です。
次はfib2016 Cape Town PC技術調査団でお世話になりました、CORE技術研究所 城代和行統括部長様にバトンをお渡しいたします。

愛知製鋼