前例のない橋梁工事に挑む

小西純哉

日本で初めて国際構造工学会(IABSE)の作品賞優秀賞を受賞した新名神武庫川橋(兵庫、NEXCO西日本)。三井住友建設の小西純哉氏が同橋建設の作業所長を務めた。1989年に入社。以来30年にわたり土木現場の最前線に立つベテランだ。 武庫川橋は、橋長442・2メートル、最大支間長100メートル、最大桁高約81メートルの5径間連続エクストラドーズドバタフライウェブ箱桁橋で、薄型軽量で蝶の形をした 「バタフライウェブ」と、橋脚部付近が吊り構造となる「エクストラドーズド構造」を併用した世界で初めての工法で建設された橋梁となる。 当初の設計では一般的な箱桁橋が予定されていたが、「上部工重量を2割軽減できるほか、シャープな形状で景観がとても良い。また、バタフライウェブを組み合わせてできる空間が桁内部への灯り取りとなるのでメンテナンス性もよいなど、様々なメリットから提案させていただいた」と強調する。 ただし、前例のない工事だけに難工事が続く。「基本的には、工場製作の部材を現場で組み立てるPC工法なので、簡単・スピーディー。工期内に完成している」としながら、「渡河橋、超ハイピアなど施工条件は厳しく、大雨にも2度見舞われ対応に苦慮した」とも。 特に、河川域内の橋脚P3の工事が難航した。橋脚はハーフプレキャストで構築していくSPER工法が採用されたが、この工事中に大雨に見舞われる。 「P3は、半年間で武庫川の最高数位(5メートル)以上に建ち上げなければならず、作業標準を見直し、工程を調整しました。また、基礎が小さいので上部工の張り出しも心配で」と苦労を振り返りながらも、「完成してみて、非常にいい橋梁だと思います」と、日本を代表する橋梁の完成を喜ぶ。 現在は、新名神大戸川橋(滋賀、同)の作業所長として、新たな橋梁現場と向き合う。 日頃から心がけていることは、「One Teamであること」。年齢も考え方も違うメンバーが集まり、ものづくりを進めるからこそ、「常に接点を見つけながら、一緒にやっていくことを大切に実践している」と語る。 1966年生まれの53歳。京都府出身。立命館大学学理工学部土木工学科卒業。(山田由乃)

愛知製鋼