反省するは我にあり

西川 昇

有限会社西川塗装店
代表取締役社長
西川 昇さん

東京オリンピックイヤーの昭和39年6月、広島で塗装工として働いていた父が、川崎製鉄千葉(現JFEスチール東日本製鉄所)で塗装の仕事のため、小学校入学直後に家族そろって千葉に引っ越すことに。「貧乏でも家族で協力し、助け合って生活していた」ことが、その後の苦しい会社経営を支える糧となる。 大学卒業後は、一般企業への就職の意向もあったが、心臓病を患っていた父の力になる道を選び、木更津工専を卒業した弟とともに西川塗装店に入社。とは言っても、4年前に起業した父の個人経営店で、中堅塗装会社の下請けの外注者として、電線の巻取り機械の吹付塗装が主な仕事だった。6月には父の心臓病が悪化し、早々に代表を受け継いだものの、午前中で終わるほどの少ない仕事量で、不安な毎日が続く。 仕事を増やさなければ経営が成り立たない。しかし技術も技能も、営業力もない。実績も担保もないから銀行の融資も受けられない。もう一度、基礎から出直そうと、塗料販売店のカタログを教材にして、病床の父から技能を、商工会議所に通って帳簿の付け方も学んだ。できるだけ多くの資格も独学で取得した。 「お客さんのニーズに応えることが重要」と、苦しい中でも努力を積み重ね、信用を得ることで徐々に仕事も増え、28歳で有限会社西川塗装店として法人化に。その後も取引先の手形不渡りや、連帯保証先の会社倒産による多額の債権を背負うなど、幾多の困難に見舞われた。「生活費は何とかなるから」という妻の支えや、温かい人たちの支援もあり、起業6期目には売上を1億円の大台に乗せた。 社員を動かす前に、まずは自分が動く。人の責任にはせず、自ら反省すること、「反省するは我にあり」がモットーだ。 昨年度は、千葉市の稲毛陸橋塗装塗替えの大型案件を受注し、今後のさらなる飛躍を目指す。 広島県呉市出身、62歳。 (本間俊行)

愛知製鋼