吾唯知足2018年8月11日号掲載分

吾唯知足これまでの体験では、多くの被害をもたらす台風シーズンは夏から秋にかけてのことであったように思う▼一方、まだ夏には遠い4月11日、大分県中津市耶馬渓町では幅約200メートル、高さ約100㍍にわたる区域が突然崩落し、住宅・住民が土砂に襲われる災害が発生▼地層が岩盤層と火山層の二層構造と言われ、岩盤風化説との見方もあるが、土砂災害の原因となる大雨や台風、地震などはなく、「突然」の、この大惨事には、身が竦む思いを抱いた▼県は現場周辺を土砂災害特別警戒区域に指定しているが、こうした土砂災害特別警戒区域は全国で約36万か所(国交省・2月末時点)あるといわれる▼崩落地一帯は邪馬日田英彦山国定公園に指定され、渓谷「耶麻渓」として知られており、年間約80万人もの観光客が訪れる景勝地だ▼我が国の渓谷は近年、観光地として開発され、特に集客の目玉ともなる一方で、防災の観点からすると予測不能の危険が付きまとう▼本欄で再三再四書いている山女魚、岩魚釣りなどを口実に山深く立ち入っていた、知己の橋梁社会の先人・先達には今、改めて頭をたれるしかない。遊びを装いつつ、さにあらず、彼らの本意は釣りとは別に山岳地の山肌など山相の状況確認だった…と。

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