吾唯知足2020年12月1日号掲載分

吾唯知足新型コロナウイルスに翻弄され続けた今年も師走、「来年は順調に始動したいものだ」とつくづく思う▼一方で先月14日、橋梁業界にとってはコロナ以上に深刻でシビアな事故があった。ほかでもない山口県本土と離島の長島を結ぶ「上関大橋」で、橋と道路の結合部に二十センチの段差が発生し、車が衝突した事故だ▼日本の橋梁は「壊れない・落ちない」という橋梁神話をよりどころに整備が行われてきた。阪神・淡路大震災は、その神話を崩しかけたが、今回の上関大橋の段差事故では「初めてみるケース」と異口同音のコメントが聞かれるばかりだ▼このような事故が東京のような大都市で発生したらどうなるか。技術大国としてありえない惨状を諸外国に見せつけることになるだろう▼事故前の11月11日付号本紙に、毎年発生する災害を杞憂する、ベテラン技術者が「ムリに橋脚を造らないということ。安全なつもり、経済性で有利なつもりでも、施工の手間、期間がかかり、しかも洗掘してしまうリスク(があり)、管理性もよくなく、反って高上りの事例もある。流量だけでなく流況、(過去の)被災事例も交えて計画するよう努めている」と語ってくれた▼興味深いインタビューなので引用しておきたい。安心・安全は最優先だ。

愛知製鋼