吾唯知足2020年6月21日号掲載分

吾唯知足橋梁専門記者を始めた頃、三宮駅から、バス、タクシー、時には歩き、神戸港から淡路島や鳴門に渡ったものだ。時間に追われる中、どこか悠々とした気持ちで目的地を目指していた▼小紙創刊の1973年当時、まさに本四架橋が進捗していた頃、我々日本人は未来を相手にした、不思議な手ごたえの中で、生きていたような気がする▼本四架橋が実現し、全国に高速道路が建設され、離島に橋が架かり、利便性と経済的利得が生み出されて行く▼時代の流れか、場当たり的なインフラ投資に対し、小欄では、将来を俯瞰できる「事業マップ」の必要性を訴えて来た。ネットワークの充実こそ未来への投資であると▼コロナ禍でマイナス成長が確実視される経済を立て直すためにも、今こそインフラ事業の緊急事態を発して、あらまほしき(望ましい)「事業マップ」を整えてもらいたい▼緊急事態宣言が解かれ、遅い春が来て小学校に入学しても子供たちは、友達と親密になる前にまず「三密」を避ける事を説かれるそうだ。リモートで人と人が繋がることが常態化する現在、それがコロナに対応する賢い出口としても、人と人をつなぐネットワークへの投資こそが未来を切り開いてきた事を忘れるべきではないと思う。

愛知製鋼